やっと。。。やっと公開となった「トップガン マーヴェリック」を見てきました。結論から言うと最高で、最高と言える最高でした。興奮し過ぎて何から語ってよいものか整理できませんが、同世代のおっさんと酒の席で感想をぶちまけるくらいの感想文ですので、生暖かく見守ってください。タイトルにもある通り【ネタバレ全開】ですので、未見の方は絶対に見ないでください。明日、劇場に見に行ってください。
ちなみにIMAXで見るために50Km彼方の劇場まで車を走らせました。なぜ、岡山にはないのだろう?IMAXは通常よりもスクリーンが大きくて、とても臨場感があります。友人が予約してくれた座席番号はなんと「F-18」です。ありがとう!!
トップガンが公開された当時は高校生でしたが何度も劇場に見に行きました。当時は今のように指定席ではなく、一度入場すれば何度でも見ることができたので、一日中見ていました。3,000円のお小遣いを貯めて10,000円のVHSテープも買いました。大人になってもDVDが出れば買いましたし、BDが出ればまた買いました。4KUHDは最近自宅に見る環境が揃いましたので、これを機会に買おうかとAmazonを覗くと売り切れでした。みんな考えることは一緒ですね。
このワッペンは「トップガン」公開当時に、やはり少ないお小遣いから絞り出して購入したものです。
全てマーヴェリックのフライトジャケットに貼り付けられている物です。
それから36年以上の歳月が流れましたが、劇中に登場するマーヴェリックは、我を通したことで出世が遅れています。かつてのライバルのアイスマンは大将として艦隊司令官にまでなっています。大将という階級の上には元帥があるだけで、上から2番めの階級です。大佐からだと准将、少将、中将、大将と4つも階級が上です。普通なら大佐でも十分にお偉いさんですけどね。凡人のエリートの到達点みたいなイメージです。
マーヴェリックは36年前のまま歳だけを取ったような感じで、家庭を持つことなく学生気分で好き勝手に生きている自分を重ねてしまいます。相手は英雄で、私は単なる落伍者ですけどね(笑) そんな感じで感情移入していますので、序盤の訓練で生意気な生徒たちを撃墜しまくるのはとにかく爽快でした。
老兵もののよくあるパターンだと「若者に受け継ぐ」みたいな感じだと思いますが、マーヴェリックは指導はしますが、道を譲る気は全くありません。訓練では生徒をガンガン撃ち落とし、実戦にも出張っていき、誰よりも破天荒で前に前に出ます。「俺たちは歳を取ったが、まだまだやれるぞ!!」と背中を押されているような気がするのは私だけではないはずです。
塩梅の良い雑さがまさに『トップガン』
トップガンは雑な話です。でも、それで良いのです。外に対するドラマではなく、仲間達の内に対するドラマですので、外に対する要素は比較的どうでも良いのです。敵国は、なーんとなくあの国っぽいのですが、あくまでも「ならずもの国家」であって「あの国」ではありません。Su-57を装備している国。。うっ頭が。。。
目標への攻撃方法なども「もっとやりようがあるだろ。。」としか感想が出ませんが、そんなことはどうでも良いのです。もっとも「雑さが良い」と言っても、あまりに度が過ぎて「インディペンデンス・デイ リサージェンス」のような悲劇の再来になっても困ります。「それっぽさ」は必要です。
しかし、トップガン マーヴェリックは実に良い塩梅の雑さをしっかりと継承していて、大切な部分は丁寧に描かれていました。最近の映画はジェンダーや人種問題などへの配慮からワザとらしい配役があったりします。トップガン マーヴェリックでもメンバーに女性パイロットが登場しますが、これ見よがしではなく、とても自然な感じでした。後席に座るボブも良いキャラクターで、この2人の絡みももっと見たい感じでしたが、各登場人物はマーヴェリックを食ってしまわないように配慮されていたように思います。やっぱりトップガンはマーヴェリックの物語ですからね。
余談ですが、このボブを演じるルイス・プルマンは、なんとあのインディペンデンスデイで歴史に残る演説をした我らがトーマス・J・ホイットモア大統領を演じたビル・プルマンのご子息です。親子2代でF/A-18で戦ったわけです。どうりで親近感を覚えるはずですね。
『トップガン』をもう一度見せてくれた!
まず、出だしから鳥肌全開です。DNAレベルで刻まれてしまった、あの音楽が流れ、あの字幕でトップガンの説明が表示されます。そのまま、あの色温度の低い映像で空母上のけたたましい雰囲気の中、急にデンジャーゾーンに音楽が変わりF/A-18がカタパルトで射出されます。これはトップガン マーヴェリックにおいて、ストーリー的には全く、1mmも必要のない無駄なシーンです。作品によってはパクリと言われてしまいかねない演出ですが、これは違います。悠久の時を経てDNAに刻まれたあの興奮を呼び起こすためにもっとも効果的な演出でした。実際にこのOPで見ていた人は一気に脈拍が上がったのは間違いないでしょう。最高です。
個人的にはトップガンで印象に残っている「ガチャガチャレバー」も健在です。操縦桿もスロットルレバーも無駄にガチャガチャ音を鳴らしますし、力を入れて一気に操作する感じが独特ですが、これもトップガンの記号の一つです。
離陸する戦闘機とバイクで並走するシーン、ピアノであの曲を弾いて盛り上がるシーン、ビーチで陽キャスポーツするシーン、空母のブリッジをかすめ飛ぶシーン(コーヒーをこぼして欲しかった)、カタパルトで射出される時のサムズアップから勢いのある敬礼、男の子なら一度はやってみたいですよね。どれも最高です。
グースの息子ルースターとのドラマも胸熱ですね。ここはもっと尺が欲しかったのですが、上映時間は有限ですので致し方ないところです。ルースターに「だから死んだんだ」とマーヴェリックが言われた時はリアルに胸が苦しくなりました。あの時のマーヴェリックの表情は忘れられません。
また、アイスマンの登場シーンも胸熱でした。あんなに尖っていたアイスマンが年相応に落ち着きが出て、マーヴェリックを諭すシーンはマジで泣いてしまいました。ちなみにアイスマンの俳優ヴァル・キルマーは実際に喉の手術であの状態だそうです。あの声を絞り出してマーヴェリックに声をかけるのは迫真ではなく真だったのです。
しかし、ここまで書いて思いましたが、この章で書いた感想は全て「あの時に」トップガンを見た人間による高評価なんですよね。アイスマンのシーンも積み重ねたものがあるので号泣シーンになりますが、冷静に一歩引いたところから見るとなんてことはないシーンなのです。
トップガン公開当時に見たおっさんにはグッサグサに刺さりまくる「究極のファン感謝祭」であったことは間違いありませんが、当時のトップガンの興奮を知らない今の若い人が見たらどう思うのでしょうね。
残念ながらF-14を駆ってSu-57と戦うのは知っていました。
クライマックスではF-14に乗ってSu-57(劇中でミグミグ言うてるけど、それスホーイやぞ)とドッグファイトを繰り広げますが、実はこれはPVでネタバレしていました。
2:30付近の一瞬のコクピットのシーンで、進行方向左側を後方にかすめて行くのはどう見てもスホーイ57です。そして、コクピット両側のエアインテーク上面は特徴的なF-14のものです。可変翼も見えますね。戦闘機が好きな人なら、少なくともF/A-18ではないというのはひと目でわかります。
劇中でもかなり序盤で「ならず者国家」の飛行場になぜかF-14があることをセリフでも説明していて「乗りますよ!」オーラ全開でしたので、PVで気がついていなくても「まぁ」という感じでしたが。ここはもう少し上手くやって欲しかったなぁと思います。
しかし、かつての相棒グースの息子ルースターが後席に乗る展開は考えていなかったので、十分に「そうきたか!」となりました。
なぜF-35ではなくF/A-18?
トップガン マーヴェリックを見るまでに少し気がかりだったのは、メインとして登場する戦闘機がF/A-18であることでした。F-14は満場一致で「最もかっこいい戦闘機」です(笑) 可変後退翼や正面から見た時にネガティブキャンバーになっているエアインテークなど「性能よりもかっこよさを優先したのではないか?」としか思えないような制空戦闘機です。
対するF/A-18は、かっこいいのはかっこいいのですが、主役になるようなイメージではないのですよね。突き詰めた設計ではなく、なんでもこなすマルチロール機。外見もシュッとしていますが、F-14に比べると、どこか頼りない気がします。2ちゃんねるのA-10乗りには「オカマ野郎」呼ばわりされています。
しかし、それは杞憂でしたね。渓谷を飛ぶF/A-18の編隊がわさっとベイパー出すシーンはめちゃめちゃかっこいいです。ちなみに下のPVの1:45のシーンです。
本題とはそれますが、F/A-18のF/AというのはFighter(戦闘機)とAttacker(地上攻撃機)の両方の任務をこなせるという意味です。F-14も後期型では地上攻撃能力が付与されましたし、F-15もF-16もF-35も地上攻撃ができるマルチロール機ですが、なぜF/A-18だけこの表記なのでしょうね?F/AとFAの表記もどちらが正しいのかとネットで論争になったりしました。
ちなみにF/A-18には「ホーネット」と「スーパーホーネット」があります。ぱっと見では同じ機体に見えるのですが、実は図面などを並べてみるとサイズも全く異なるものであることがわかります。なんでもホーネットに海軍が満足できなかったけど、新型が配備されたばかりなのに「新しいのが欲しい」では予算が下りないので、そっくりな形の別の機体にして「改修するから」で予算を通したとかいうおもしろエピソードがある戦闘機です。
さて、本題の「なぜトップガンマーヴェリックではF-35ではなくF/A-18なのか?」です。劇中では任務に向いているという理由が説明されていましたが、実際のところは別に理由があると思われます。
トム・クルーズはトップガンの続編を作る条件の一つとして「飛行シーンは本物を使う」というのを挙げていたそうです。なんでも最初は「訓練を受けるから実機を操縦させろ」とまで言っていたそうです。流石にそれは叶いませんでしたが、実際に俳優が映る飛行シーンは全て俳優が後席に乗って撮影しているそうです。そうです。F-35には複座型がないからです。飛行中に俳優が映るシーンではPVをよく見ると全て後席であることがわかります。
ちなみに、トム・クルーズとボブを演じたルイス・プルマン以外は全員機内で嘔吐したそうです。それにしても、還暦間際だというのにトム・クルーズの超人ぶりときたら。
機種の選定においては、ちょっとおもしろいエピソードもあります。トム・クルーズがトップガンについてツイートした時に、米空軍の公式アカウントが反応して面白いやりとりが展開されました。
If Maverick really had a need for speed, he could hop into one of our F-15E Strike Eagles! #DYK: They have a top speed of 1,875 miles per hour. https://t.co/RQtJoWfGJo
— U.S. Air Force (@usairforce) May 31, 2018
雑に訳すと「マーヴェリックがスピードを望むならF-15Eストライクイーグルとかどうよ?」です。これに対して米海軍はトップガンのセリフを使って
.@usairforce Remember, boys, no points for second place. @flynavy
— U.S. Navy (@USNavy) May 31, 2018
「2位にポイントはないぜ?」と反撃。更に米空軍がF-15Eの戦績を引用し
The F-15 knows nothing about this “second place” thing you speak of. Check the scoreboard! #Undefeated https://t.co/tOj6GZ9Ei4
— U.S. Air Force (@usairforce) May 31, 2018
「F-15が2位なわけないだろwww」と応戦します。実際にF-15の実戦での戦績は100機以上を撃墜し、自らの被撃墜数はなんと0機です。こんな戦績をもつ戦闘機は他になく、数値の上では文句なしに世界最強の戦闘機です。まぁトップガン(アメリカ海軍戦闘機兵器学校)で空軍機が採用されるわけはないので、勝負は米空軍のアカウント担当者にもわかっていることなのですが、ノリがハリウッドぽくて良いですね。
「トップガン」「トップガン マーヴェリック」で登場した空母の名前は?
トップガンで登場した空母は「エンタープライズ」でした。「トップガン マーヴェリック」では「エイブラハム・リンカーン」で撮影されています。広報活動の一環として訓練中に撮影されたそうで、あくまでも訓練優先。撮影のためになにか大きく軍隊としての活動に制限があったことはなかった模様です。まぁ軍隊は税金で動いていますのでね。撮影のためだけに航空機を飛ばした場合は、その費用は映画製作会社に請求されたそうです。
上の方でジェンダーの話を少ししましたが、偶然にもリアルでの「エイブラハム・リンカーン」の艦長は女性です。また、映画公開の1週間前に横須賀に初寄港しました。映画のプロモーションではないと思いますが(笑)
ちなみに、OPでの甲板上のシーンで立ち込めている蒸気はカタパルトから出ています。今主流のカタパルトは原子炉の熱で沸かしたお湯の蒸気を圧縮して航空機を飛ばしています。しかし、配備が進められている次世代の原子力空母「ジェラルド・R・フォード」級では、電磁力によるリニアカタパルトとなっていますので、そのうちに空母の甲板上に蒸気が立ち込めるシーンは見ることができなくなります。「トップガン マーヴェリック」が最後の晩餐になるかもしれませんね。リニアカタパルトでも射出時に稲妻とかが走ってくれれば、夜間の発艦シーンが捗りますが、残念ながらそういうことはなさそうです。
渓谷を飛ぶミッションで「エスコンみたいだ」と言うか「オペレーション・タイトロープだ」と言うかで年齢層がバレるので注意です。もちろん、私は後者です。