「Chrome OS」とか「Chromebook」は「名前は知っているけど、どんなOSなのかいまいちわからない」ですよね。最近はGoogleが売り込みに力を入れているのか、よく大手メディアでもレビュー記事を目にするようになったのですが、ほとんどの記事は、ふわっとした感じで「本当にChrome OSを使ったことがあるのか?」と思うレベルです。そこで「Chrome OSというのは、こんなのですよ」といった感じで紹介したいと思います。
とても誤解の多い「Chrome OS」
私も、ネットの紹介記事などを読んでもよくわからず、Chrome OSは得体がしれないなと思っていましたが、それだけに興味津々でしたのでGoogleのPixcel Slateを米国から転送サービスを利用して購入しました。それから2年以上使用しましたので、巷で言われている事が本当なのか?間違っているのか?を、実際の動きを交えながら数回に分けて紹介します。
Chrome OSはタブレットモードに対応していますし、近年ではAndroidアプリも動作しますので「タブレットとしてもお使いいただけますよ」というのが売りになっています。そのため、Chrome OS搭載のPCは、ほとんどの製品がタッチパネルに対応した2in1のノートPCです。その愛称が「Chrome Book」であるため、Chrome OS PCと呼ばれることはほとんどなく、巷ではChrome OSを搭載したPCのことはChrome Bookと呼ばれています。しかし、実際にはChrome OS搭載のPCはノートPCのみではなく、少数ですが小型のデスクトップPCもありますので、本記事では「Chrome OS」や「Chrome OS PC」と呼称します。
「データは基本的にクラウドに保存する」?
「データは基本的にクラウドに保存されます」Chrome OSを語る場合によく見るフレーズですが、別にそんなことはありません。普通にローカルストレージにファイルを保存して、Windowsのエクスプローラーや、Mac OSのFinderなどと同じように管理します。デスクトップに複数枚のウインドウを開くこともできます。WindowsやMac OSと変わりありません。
当然ながらGoogleのOSですので、最初からGoogle Driveが組み込まれていてフォルダの一覧に表示されています。ここにファイルを保存すればクラウドに同期されます。Google Drive以外にもDropboxやOneDriveのフォルダも追加できます。DropboxはDropbox純正の仕組みが用意されていますし、OneDriveは有志が作成してくれているChrome拡張で追加することができます。
NASや他のOSの共有フォルダにも接続できます。上のスクリーンショットでは、Raspberry Piで作成したNASとWindows 11の共有フォルダを開いています。
ストレージに保存されたMP3ファイルやMP4ファイルをダブルクリックすればOS組込のプレーヤーで再生されますし、JPEGなどの画像ファイルをダブルクリックすればビューアーで表示されます。
このようにデータ(ファイル)を、クラウドに保存するのも、ローカルに保存するのも、ユーザーが決めることです。Chrome OSだからといって、特別なことは何一つなく、WindowsやMac OSと同じです。
「アプリケーションはウェブアプリで完結!」?
「アプリケーションはウェブアプリを使用します」このありがちなフレーズを翻訳すると「Chrome OSには、ほとんどアプリケーションがないのでウェブアプリで済むものはウェブアプリで。それ以外は諦めましょう」ということです。「インストールが不要!」「データが自動的にクラウドに保存される!」さらには「Chrome OSではオフィスソフトはGoogleのドキュメントやスプレットシートが使用できます!」などと、まるでメリットであるかのような記述がよく見られます。
あたかもChrome OSならでは強みがあるような書き方をしている記事をよく見ますが、ウェブアプリですので、当然ながらWindowsでもMac OSでもウェブブラウザ上で同じように使えます。
ちなみに、ウェブアプリ以外のアプリケーションがないのかと言えば、そんなことはありません。
上のスクリーンショットでは開発者が使うPostmanというアプリケーションや、テキストエディタ、Wake On Lanのマジックパケットを投げるアプリケーションが動作しています。Chrome OS用のアプリケーションは「Chrome ウェブストア」からインストールできます。
Chrome ウェブストアは、WindowsなどのChromeブラウザからアクセスした時には、Chromeブラウザの拡張機能とテーマしか表示されませんが、Chrome OSでアクセスするとChrome OS用のアプリも表示されます。
インストールするとランチャーに登録されて、WindowsやMac OSなどのアプリと同じように、別ウインドウで独立したアプリとして使用できます。ただ、Chrome ウェブストアに登録されているアプリのラインナップはお察しです。WindowsやMac OSのように、豊富なアプリケーションがChrome OSにはないので、ウェブアプリでなんとかしなければならないだけの話なのです。
しかし、現在のChrome OSでは、AndroidアプリやLinuxのアプリが使えるようになっていますので、これらのアプリでも足りないものを補っていくことができます。このあたりに関しては他の投稿にて紹介しようと思います。
「OSが軽い」「起動が速い」「ロースペックPCでも使える」
Chrome OSは、とてもシンプルですのでハードウェアへの要求性能が低いのは確かです。WindowsやMac OSは何十年もの歴史があり、その間に使われてきたアプリケーションの互換性を保つために、色々な仕組みが組み込まれているので重いという側面があります。しかも、Chrome OSはそもそも動かすアプリケーションがありません。重いアプリケーションがないのですから、そりゃ必然的に動きは軽いしストレージもそんなに必要がないということになります。仮にChrome OS版のPhotshopがあったとしたらどうでしょう?ロースペックなハードウェアでは使い物にならないでしょう。つまりはそういうことです。
確かにChrome OSでできることに限っていえば、いろいろな意味での軽さというのはあるとは思いますので、それはそれで割り切った良さがあると思います。実際に私が使用しているPixel Slateは第8世代のCore m3ですが、動作が重いと感じることはありません。
起動速度に関しては、電源OFFからのコールドスタートは確かにとても速いです。しかし、Windowsには「休止」がありますし、ノートパソコンの場合はスリープで運用することが多いと思いますので、いうほどのメリットではないと思います。
また、OSの軽さからくる長いバッテリー駆動時間というのもロースペックのハードウェアですので、間違いなく良いはずですが、最近はWindowsもMac OSもかなり良くなってきていますので、さほどのアドバンテージはないと思います。定量的な比較をした訳ではありませんが体感として「バッテリーが物凄く持つ!」とは感じません。
Chrome OSの歴史と現状
Chrome OSに対する誤解が多いのは、その歴史的経緯によるものがあると思います。Chrome OSが登場した時はそもそもブラウザのChromeしか動作しないOSでした。OSが起動するとChromeブラウザが画面いっぱいに表示される。本当にそれだけでした。こんなイメージです。
Chromeブラウザは拡張機能というChromeブラウザ上で動作するアプリをChromeウェブストアからインストールすることができます。このChromeブラウザの拡張機能はWindowsでもMac OSでも同様ですので、ご存知の方も多いと思います。この拡張機能として、みんながアプリケーションを開発してくれればChromeブラウザ上で様々なアプリケーションが動作します。すなわちChromeブラウザ自体がOSになるとGoogleは考えました。
そうなれば、WindowsでもMac OSでもAndroidでもiOSでも、Chromeブラウザさえインストールされていればそれで良くなり、すべてを駆逐してChromeブラウザでPCもスマホも支配できる!くらいの野望があったのだと思います。しかし、ご存知のようにそうはなりませんでした。Chromeブラウザの拡張機能は今も使われていますが、あくまでも補助的なアプリケーションだけに留まっています。
また、その頃には「これからはすべてのアプリケーションがウェブアプリになる!」「データは全てクラウドに保存される!」という幻想を抱いた人がたくさんいて「それならウェブブラウザだけが動けばいいじゃん」とクリエイティブな人達は考えていました。実際にはクラウドストレージに大容量データを保存するには割に合わない維持費がかかるし、ネットはどこでも繋がる訳ではなく、通信量による料金や通信速度の問題がつきまといます。アプリケーションの開発もウェブアプリは通常のアプリケーションよりも実装の難易度が高く、自由度が低いのが現状です。こうしてChrome OSや、その他のクラウドファーストな端末はあっという間に市場からハブられました。今から10年先20年先がどうなるのかわかりませんが、少なくとも当初のChrome OSの思想は早すぎました。
そこで、アプリをインストールできるようにしたり、ローカルのストレージ上で作業できるようにしたりと、WindowsやMac OSなどのように「普通のOS」になったのが、今のChrome OSです。
今回の記事のみを見ると「良いところなし」な感じがしますが、今後の投稿で説明するLinuxへの対応など、刺さる人はいると思いますし、別に作業用のWindows PC又はMacがあるという前提では、2年以上使ってみて「ノートPCなんてこれで十分じゃん」というのも感じました。
上のスクリーンショットはリモートデスクトップでWindowsパソコンに接続して、LuminarというRAW現像ソフトを使用しているところです。わかりやすいようにウインドウ表示にしていますが、もちろん全画面表示にして、あたかもWindowsを使用しているようにすることもできます。このように、リビングや外出先でChrome OSではできない作業が必要な時には、リモートデスクトップでWindowsやMacに繋いで作業すれば良いのです。
そう考えると、いろいろな意味での「軽さ」からくる、価格的な優位性がChrome OSの強みでしょう。
また、私のような人間には「WindowsでもMacでもない」と言うだけで琴線に触れました。そんなこんなで、2年以上使ったPixel Slateのキーボードの調子が悪くなったので、新しくASUSのChrome Book「C425TA」を入手しました。とても安価ですが、まったく問題なく使えています。
万人におすすめできる訳ではありませんので「どんな人に向いているのか?」といった視点での記事も投稿していきたいと思っています。