SSDにヒートシンクを装着する時に、いつも思うのですよ。「CPUではCPUグリスを塗るのに、なぜSSDは熱伝導シートなのだろう?」と。そんな訳で、M.2のSSDにCPU用の熱伝導グリスを塗ってからヒートシンクを装着して、その温度変化を検証してみます。ついでによく言われる「SSDのシールを剥がした方が冷えるか?」と「シールを貼った状態、シールを剥がした状態」でCPUグリスを塗って比較したのですが、結構意外な結果が出ていますので紹介します。
検証に使用したSSDはLexar NM790の2TB版です。シーケンシャルリード7400MB/s、シーケンシャルリード6500MB/sで、Gen4では最速クラスのSSDです。
ヒートシンクは手持ちでは一番大きいものを、CPUグリスは超定番のARCTIC MX-4を使用しました。
M.2スロットはもちろんCPUに一番近いSSDの性能を引き出せる場所に挿しています。
比較内容としては、最初からSSDに貼られているシールの有無と、熱伝導シートかCPUグリスの組み合わせで4パターンと、熱伝導シートもCPUグリスも塗布しないで直接ヒートシンクを装着したパターンの合計5パターンの温度の推移を実測しています。
ベンチマークによる短時間の高負荷
まずはベンチマークにより、最大負荷をかけてみます。ベンチマークはお馴染みのCrystalDiskMarkで、64GiBを9回、シーケンシャルリードとシーケンシャルライトのみ実行しています。シーケンシャルのみ実行している理由は、ランダムは負荷が軽くどんどん冷えて行ってしまうからです。グラフの途中に谷間があるのは、シーケンシャルリードとシーケンシャルライトの間のインターバルで冷えているものです。
グラフは大きく2つのグループに分かれているのが見て取れます。2つのグループの違いはSSDに最初から貼付けされているシールの有無です。熱伝導シートを挟もうが、CPUグリスを塗布しようが、SSDに最初から貼付けされているシールを剝がさない方が、はっきりと冷えています。
今回のメインテーマである熱伝導シートか?CPUグリスか?という違いに関しては(ブログ的には悲しいことに)あまり有意な差はありません。それどころか、熱伝導シートもCPUグリスもなしでも、SSDに最初から張り付けられているシールに直接ヒートシンクを装着しても差が出ていません。少なくとも、今回の計測で使用したLexarのSSDでは、純正のシールが非常に良い仕事をしているようです。
ただ、有意な差と言えるかは微妙なところですが、後半のシーケンシャルライトでは、シールは剥がさないで熱伝導シートを挟んでヒートシンクを装着するという、標準的な装着が良いようです。
大量のファイルコピーによる長時間の負荷
次に大量のファイルをコピーして、ある程度長い時間そこそこの負荷をかけてみます。ファイルの容量は1TB、ファイルコピーにかかった時間は7分30秒ほどです。
こちらも前述のベンチマークと同じように、SSDに最初から貼付けされているシールの有無で大きく2パターンに分かれています。シールを剥がした方は77度前後で頭打ち、シールを剥がしていない方は73度前後で頭打ちとなっています。ここでもシールを剥がさない方が有意に冷えているのが見て取れます。
熱伝導シート、CPUグリス、どちらもなし関しては、CPUグリスが若干冷えているのが見て取れますが、有意な差かと言えば、これも計測誤差の範疇のような気がします。
と言うわけで、「SSDに最初に貼付けされているシールは剥がさないで、普通に熱伝導シートを挟んでおけばOK」というなんとも無難な結果となりました。常々「なんでSSDはグリス塗らないのだろう?」と思っていましが、まぁわざわざSSDを汚してグリスを塗っても効果はないということですね。おそらくSSDの発熱がCPUよりもかなり低いことに起因するのではと思います。あとはSSDの場合には複数のチップの高さにバラツキがあるのだと思います。今後SSDも高速化が進んで発熱が増えてくると、CPUのようにヒートスプレッダが装着されて熱伝導グリスを塗布するようになるのかもしれませんね。