「Chromebookは誰々に最適!!」みたいなフレーズを良く見ますが、本当なのでしょうか?
Chrome OSは、本当にそれに「最適」なのか?
学習に最適!
学習というのがなにの学習なのか?よくわからないのですが、Chrome OSが教育機関で生徒の学習用に採用されるケースを見て言っているのでしょう。もちろんGoogle自体も売り込みに余念がありません。いわゆるGIGAスクール構想とかプログラミング授業が必修になるとかの話がありますが、バリバリとコーディングするとかの話ではなく、小学校ではパズルのようなものだったり、中学校では基礎知識の座学だったりで、教材はウェブアプリケーションで用意されるようです。「iPadを採用」なんて学校もあるわけで、そもそもウェブブラウザが動けば何でも良さそうです。単純にChromebookがキーボード付きで安いから採用されやすいのだと思います。Chrome OSのビジネス向けモデルにはリモートでまとめてキッティングしたり、各端末を監視したりする管理機能がありますので、そういった意味では学校で生徒に持たせるには良いと思います。そもそも教育機関で使用する機器は学校が指定すると思いますので、学校教育に関連して個人が購入する場合には「最適」もなにもありません。
プログラミングを学ぶと言うのであれば、どの言語・開発環境を学ぶとしても、Chrome OSの場合にはLinuxを使用することになります。ガチの初心者にはLinuxは無理です。中高では実際にプログラミングを教える話もあるようですが、そこらへんの学校教師がLinuxを扱えるとは思えません。
ただし、後で説明するように、ある程度の経験者が「Windows系の開発をしてきたけどLinuxでの開発にも慣れたい」とか「別の言語でやってきたけど、Javaを学びたい」と言うような人には良いと思います。
ブロガーに最適!
WordPressなどは標準のエディタが優秀なウェブアプリケーションとして用意されていますので、ブラウザさえ動作すれば記事を書くのにはOSを問いません。しかし、文字だけのブログであれば良いのですが、実際にはデジカメから画像を取り込み、決まった比率でトリミング、明るさなどを調整、決まったサイズにリサイズと、ブログに貼り付けるための画像を用意するのには地味に手間がかかります。Chrome OSでもLinuxのアプリケーションやウェブアプリケーションを駆使すれば、これらのタスクは可能ですが、Windowsでは多彩なアプリケーションからこれらに特化したアプリを見つけて、かなり効率的に行うことができます。私は文章だけはChrome OSで書いたりしますが、最終的に画像を用意して記事を完成させるのはWindowsで行います。Linux上でGimp2が動きますのでChrome OSでもできないという事はありませんが、少なくともChrome OSが最適ということはありません。
ビジネスに最適!
ビジネスと言っても、どんな業種を念頭において言っているのかわかりませんが、一般的に必要なのはオフィスソフトやウェブ会議システムといったところでしょうか。
ウェブ会議というくらいですので、定番のZoomやTeamsにはウェブブラウザで動くウェブアプリ版がありますし、Androidアプリでもいけるようです。ZoomにはChrome拡張が用意されていますので、Chrome OS版のアプリとしても動作できます。ウェブ会議についてはChrome OSでも問題ないでしょう。
少々判断が難しいのはオフィスソフトです。
Googleのオフィスソフトは私がChrome OSを使い始めた頃は正直使い物にならないと思いましたが、ここ1~2年で急速に開発が進み、最近触ってみると「これで良いかもしれない」と思うくらいに良くなりました。しかし、仕事で使う場合は客先からマイクロソフトのWordやExcelのファイルが送られてくるのは日常茶飯事ですので、いくら「互換性があります」と言われても不安が残ります。送られてきたファイルを見るくらいは少々レイアウトが崩れたりしても問題ないと思いますが、こちらで作成したり書き換えたりしたファイルを先方の送るのは問題があると思います。クライアントや同僚とオフィスのファイルをやり取りせず、クライアントにはPDFにして送付するとかであれば問題はないと思います。
マイクロソフトのMS OfficeもChrome OS版というのはありませんので、ブラウザでウェブ版を使用することになります。こちらも以前はまだまだといった感じでしたが、この1~2年で一気に問題なく使えるようになりました。ただしVBAは使用できません。開発者でなければ問題ないですかね?また、ウェブアプリですのでインターネットに繋がっている必要があります。
オフラインでオフィスソフトを使いたい場合にはLinux版のLibreOfficeというのも有力です。ただし、Linuxに日本語入力環境をセットアップしたり、そもそもLinuxを操作するにはハードルがありますので、開発者とかでないと厳しいでしょう。客先とファイルをやり取りする場合の互換性の問題はGoogleのオフィスソフトと同様です。
個人的に使う分にはいずれのオフィスソフトでも十分だと思いますが、仕事で使うとなると、顧客とファイルをやりとりするにはGoogleのオフィスソフトやLibreOfficeでは互換性に不安しかありません。移動中などはあきらめてインターネット接続を確保できる環境下という条件付きであれば、MS Officeのウェブ版で事足りると思います。
また、派生バージョンで最近は「テレワークに最適」というのもよく見るようになりましたが、普通の会社であれば、仕事に使用するPCには、会社指定のセキュリティや監視ソフトが必須のはずです。そこらへんの考慮が必要なく、ZoomやTeamsでウェブ会議ができて、ウェブ版のマイクロソフトオフィスが使えれば良いというのであればChrome OSでも問題はないと思います。
いずれにしても、ビジネスで使用するにはどこか不安があります。上でも触れたように業種や自分の役割によって必要な機能は変わってくると思いますので、Chrome OSだけで自分の仕事ができるのか?というのはよく考えた方が良いでしょう。いずれにしても、Chrome OSが「最適」ということはありません。
パソコン初心者に最適!
年の瀬になると本屋さんに並ぶ年賀状作成ソフトは、当然ながらChrome OSでは動きません。年賀状はAndroidのアプリケーションで作れますが、最低限そういった工夫ができるレベルでないときびしいでしょう。年賀状なんて送らないよという人もいると思いますが、これは一例であって、初心者向けのあれやこれやはChrome OSのことなど考えられていないということです。
そもそも周りで使っている詳しい人がいない場合は、なにかの時に助けを求めることもできません。パソコンが趣味という人でもChrome OSのことはわからないという人がほとんどでしょう。初心者向けの機能が充実しているかどうかではなく、初心者にとって一番重要なのは周りに聞ける人がいるかどうかです。
ただ、本当にウェブサーフィンして、Youtubeを見るくらいしかしないというガチの初心者であれば、シンプルなChrome OSは「最適」であると言えます。
プログラミングに最適!
どこかで見ましたが、Googleの中の人が「Chrome OSを開発者に使って欲しい」と言っているのを見ました。Androidに対応したことで、Androidアプリも開発しやすくなったし、Linuxも動きますしと言うことでしょう。確かに、個人的にはChrome OSの良い着地点だと思います(開発用途で使用する場合は必ずメモリーが8GB以上のモデルを選んでください)
しかし、Visual Studio Codeはもちろん、Androidアプリを開発するためのIDEであるAndroid StudioすらWindowsでもMac OSでも動きます。また、他の言語や環境での開発についても、Chrome OSにできないことはあっても、Chrome OSでしか出来ないことはありません。残念ながら、ここでもChrome OSは最適という訳ではありません。
「Android StudioはChrome OSしか対応しません」と言ってしまえば、一気にChrome OSの注目度は上がると思いますが、今度はAndroidのシェアが心配になります。Chrome OSのためにAndroidを危険に晒すわけには行きませんよね。「iOSアプリを開発したければMacを買え!」と言ってしまえるAppleの強さよ。。。
Chrome OSは誰向け?
では、Chrome OSに価値はないのか?と言えば、それは「なぜ、私がChromebookを愛用しているのか?」が答えになります。
Windowsでもmacでもない
個人的には、これが大きいと思います。ここまでで説明してきたように単に「できる」「できない」といった機能面ではChrome OSにはアドバンテージは、ほとんどありません。しかし、世の中どんどんと先鋭化して個性がなくなっていっていますので「人と違うものを」というニーズは根強くあります。WindowsでもMacでもないというだけで価値があると思います。
また、ソフトウェア開発をするような人には「環境を作るのが好き」という人が一定数います。WindowsでもMacでもない新しい環境に「どのようなアプリが使えるかな?」とか考えながら今までにない環境を整備していく楽しみを味わうこともできます。
開発に使う場合、Linuxを使わざる負えない
「開発用途に最適」とは言いませんが、私のように「Linuxに慣れたい」という人にはお勧めします。もちろん、WindowsでもWSL2や仮想OSがありますし、MacはそもそもUNIX系のOSですので、Chrome OSである必要はありません。
しかし、より便利な方法があれば人はそちらに流れるものです。例えば「Linuxに慣れたいな~」なんて人がWindowsでApacheを使いたいと思ったら、とりあえずWindows版をインストールしますよね?仮想環境にLinuxをインストールして~とかしません。私はしませんでした。
しかし、Chrome OSには逃げ場がありません。Linux環境にインストールするしかありません。私はChrome OSを使った、この2年半で随分とLinuxの扱いに慣れました。
なんだかんだ言っても安価
ぶっちゃけた事を言えば、財布に余裕があれば、定番のMacBookや個性的なZenBook Duo、最近出たXPS 13 Plusなどを買います。しかし、2年半ほどPixel Slateを使ってきて、更にC425TAに買い替えて思ったのは「これで十分じゃん」です。C425TAなんて実売3万円程度ですからね。
「M2 MacBook Airが欲しいか?」と問われれば「欲しい」と答えますが、「13万円追加してM2 MacBook Airを買いたいか?」と問われれば「どうだろう」と首を傾げてしまうのです(あくまでもデスクトップなどが別にあり2台目としてです)
「これで十分じゃん」
これに尽きるのです。
Chrome OSよ、どこへ征く
個人的には気に入っていて、Pixel Slate、C425TAに続いて、次もChromebookを購入しても良いと思っているのですが、問題なのは琴線に触れるハードウェアがないことです。Chrome OSはAndroidを内包したことで、タブレットとしても使えるというアピールポイントがありますので2in1タイプが多いのですが、私は膝の上で使いにくいのでオーソドックスなクラムシェルタイプが好みです。
2in1は専用ボディを開発するからか、比較的オリジナルなデザインのものが多いのですが、クラムシェルはWindows PCの廉価版のボディを流用しているような感じで、ひと目見て「かっこいい!欲しい!」と思える製品がありません。「安いのだからこんなんで良いだろ?」とばかりにプラスチックむき出しの厚ぼったいベゼルだったり、でっかいメッキのバッチがついていたり。。。Macユーザーも羨むような、Chrome OS専用のおしゃれなボディを纏ったChromebookがあれば欲しいのですが。Core m3クラスのCPUにメモリー8GB、ストレージ128GBくらいのスペックで実売6~7万円くらいで。。。
GoogleがChrome OSの普及のために魅力的な製品を安価にリリースするべきだと思うのですが、どうにも土台だけ作ってイマイチ盛り上がらなければ放置するパターンなんですよね。金はあるのだから、もう少し頑張れよと言いたいところです。
結局Chromebookはおすすめなのか?おすすめでないのか?よくわからない記事になってしまいましたが、「ウェブブラウズくらいしかしない人」か「ギークの2台目」という両極端なユーザー層には良いのではと思います。メリット、デメリットをよく考えて購入してくださいと言いたいところですが、まぁ安価なモデルなら気軽な持ち出し用に試しに買ってみるのも良いと思います。