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PC

意外ときびしいノートPCのPD(Power Delivery)充電の条件

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最近はPD(Power Delivery)での充電に対応したノートPCが増えました。私が購入したノートPCもPDに対応しています。PD対応のノートPCであれば、どのPD対応の充電器でも(出力が弱ければ充電速度は低下しても)充電できるものだと思っていましたが、初めてPD対応のノートPCを買ってみて、その認識が間違っていたことがわかりました。今回はノートPC用に非純正のPD対応充電器を購入する際の注意点を解説したいと思います。

PD対応だからと言って充電できるとは限らない。

まずは電気の基礎ですが、電力(W)は電圧(V) × 電流(A)で決まります。従来のUSBの規格は電圧が5Vと決まっていて電流値によって充電する電力を決めていました。例えば、5V × 1Aで5Wです。PDはいくつかの電圧(V)と電流(A)の組み合わせで最大100Wまで電力供給に対応しています。

5V × 最大3A = 最大15W
9V × 最大3A = 最大27W
15V × 最大3A = 最大45W
20V × 最大3A = 最大60W
20V × 最大5A = 最大100W

PDはケーブルが接続された時に通信してどの電圧と電流の組み合わせで充電するかを決定するのですが、それを選択するのは充電される機器側です。つまりノートPCが求める組み合わせを充電器側が提供できるかどうかで充電の可否が決まります。

私のZenBook Sは20V × 3.25A = 65Wのようでモバイルノートとしては、かなりの大電力で充電速度が速いのですが、充電器への要求度は厳しくなります。つまり充電器には20V × 3.25Aの組み合わせで65Wを供給可能である事が求められます。

ノートPCが複数の組み合わせに対応していて、例えば20V × 3.25A = 65Wが無理であれば電流値を2.25Aに下げて45Wで充電してくれれば良いのですが、残念ながら少なくともZenBook Sはそのようにはなっていないようです。

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今回テスト用に購入した46WのPDに対応したAUKEYの充電器は最大20V × 2.3Aを出力することができます。電圧が20Vに対応していればPDの仕様では「最大3A」のように電流値は可変であるためもしかしたらZenBook Sが調整して2.3Aで吸ってくれるのではと期待したのですが、残念ながらZenBook Sはあくまでも3.25Aで吸おうとして充電器の容量を超えてしまうために、充電器の安全装置が働いて出力をカットしているように見えます。

リチウムイオンバッテリーは満充電に近づくと過充電を下げるために電流値を落としていきます。ZenBook Sの場合も90%を超えたあたりからどんどん電流値を下げていきますので、十分に電流値が下がった段階でAUKEYの充電器に繋ぎ変えると正常に充電します。

MacBookなどが規定よりも小さな出力の充電器で充電できるのは、ケーブル接続時の通信で充電器側の出力を見て電流値をある程度合わせる機能があるのだと思いますが、よくわからないのは規定が45Wの ZenBook 3が30Wの充電器で充電できるという話があることです。同じASUSなのにZenBook 3の方が幅広く対応しているということなのでしょうか?

ちなみにケーブルは100W対応のものを使用しており、純正充電器に接続した場合はちゃんと65Wで充電できています。

モバイルバッテリーでのノートPCの充電は更にきびしい。

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上で登場したAUKEYの充電器には実は60Wに対応したものがあります。なぜ、わざわざ45Wの充電器を購入したかといえば、現状のPD対応のモバイルバッテリーの多くは45Wが最大出力ですので、45Wでの充電ができるかを確認したかったからです。結果は残念でしたが。。。

60W以上のモバイルバッテリーとなると、価格もはね上がってしまいます。

今後は60W以上のPDに対応したモバイルバッテリーも登場すると思いますが、PDは対応が難しいのかどうにも製品展開が遅いのですよね。

PD充電器を購入する時はここだけには注意!

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無駄に45Wの充電器を購入してしまった私ですが、実はそこに至るまでにもう一つあやまちを犯して散財しています。それはこれです。

「Power Delivery対応 60w」って書いてありますよね?そうかそうかとポチりますよね?ところが、この製品は「5ポート合計で60Wに対応」なのです。PDポート単体での最大出力は30Wでした。製品によって違いますが「合計」で記載されていることが多いので要注意です。

一番の問題はノートPCの仕様が非公開であること。

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複数の充電電圧に対応させるのには回路設計への影響が大きくなりそうですが、電流値はどのリチウムイオンバッテリー搭載の機器でも残量によって可変させている訳ですので、ハードウェアの変更は必要なく、ファームウェアだけで対応できるのではと思います。

現状で一番問題となるのは、ノートPCのメーカーが充電仕様を公開していないことです。ASUSのサポートにメールで問い合わせてみたりもしたのですが、回答は「非公開です。純正充電器を購入してください」というつれないものでした。結果、私は無駄に45Wの充電器を購入して散財してしまった訳です。

よくよく公開されている仕様を見るとAppleもASUSも「高速充電に対応」とは書いていても、どこにも「PDに対応」とは書いていないのですよね。単に純正の充電器を購入してもらいたいだけなのか?PDの仕様に準拠できていないのか?非純正の充電器で本体が損傷して、とばっちりクレームにつながるのを恐れているのか?

PDはスマホには「従来よりも高速な急速充電」という価値をもたらしましたが、ノートPCの場合は従来の専用ACアダプタと比べて充電速度が速くなるわけでもなく、「汎用の充電器で充電できる」「モバイルバッテリーで充電できる」という互換性が新たな価値ですので、そのあたりを各メーカーには汲んでほしいところです。現状では下手に高速な充電速度を狙って60W以上の高出力に対応するよりも、充電器やモバイルバッテリーが豊富な30Wや45Wの方がユーザーにとって有益なのではないでしょうか。