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PickupRaspberry Piレビュー

Raspberry Pi 5でNASを作るとRaspberry Pi 4よりも転送速度が速くなるのかを比較

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かなりパワーアップして登場したRaspberry Pi 5ですが、NASとして運用した場合にRaspberry Pi 4よりも転送速度が速くなるのか?を検証してみたいと思います。

NASはお馴染みのSambaをRaspberry Piにセットアップしています。認証なしのゲスト接続ができるように設定して、5GBのMP4ファイルをWindows 11からNASにコピーしたり、NASからWindows 11にコピーした時のダイアログに表示される実測値をみていきます。

NASの転送速度に影響しやすいのはストレージ(HDDやSSD)の読み書きの速度、ストレージの接続インタフェース(USB)の転送速度、ネットワーク(有線LAN)の通信速度です。今回使用したストレージは下記のUSB HDDです。東芝のものをバッファローブランドで販売している製品です。

最安クラスの安価なUSB HDDです。録画用ですのでランダムアクセス性能は低いのですが、シーケンシャルアクセス性能はリード、ライト共に200MB/s弱の速度が出ており、HDDのシーケンシャルアクセスとしては最速クラスです。

後述するようにストレージがボトルネックにはならないと思われる十分な性能です。

USBの転送速度

Raspberry PiのUSBポートはRaspberry Pi 4、Raspberry Pi 5共にUSB3.0とUSB2.0を2ポートずつ、Raspberry Pi 3の場合にはUSB2.0のみを4ポート実装しています。それぞれの転送速度は

USB3.0 5Gbps(625MB/s)
USB2.0 480Mbps(60MB/s)

となります。より親しみのある単位はMB/sのほうでしょう。MB/sは「毎秒~メガバイト」です。つまりUSB3.0では秒間に625Mをファイル転送する性能があるということです。もちろん理論値ですので実測値はもう少し低くなりますが、大抵の場合は、まぁまぁこの理論値近くの速度が出ます。

ネットワーク(有線LAN)の通信速度

Raspberry Pi 4、Raspberry Pi 5のLANポートは共にギガビットイーサー(1000BASE-T)に対応しています。今回は100BASE-Tにしか対応していないRaspberry Pi 3 model Bも比較しますので、一緒に規格の通信速度を記載しておきます。

1000BASE-T(ギガビットイーサー) 1Gbps(125MB/s)
100BASE-T 100Mbps(12.5MB/s)

単純に10倍の通信速度の差があります。

ちなみに、Raspberry Pi 3 model B+ではギガビットイーサーに対応しましたが、内部的にUSB2.0に接続されていて、なんやかんやで、その通信速度は300Mbps(37.5MB/s)程度となっています。

スペックから予想されるのは、何れのモデルでもネットワーク(有線LAN)の通信速度がボトルネックになると予想されます。

HDD(今回使用したもの) USB 有線LAN
Raspberry Pi 3 model B 200/190MB/s USB2.0 60MB/s 100BASE-T 12.5MB/s
Raspberry Pi 3 model B+ 200/190MB/s USB2.0 60MB/s 1000BASE-T 37.5MB/s
Raspberry Pi 4 200/190MB/s USB3.0 625MB/s 1000BASE-T 125MB/s
Raspberry Pi 5 200/190MB/s USB3.0 625MB/s 1000BASE-T 125MB/s

Raspberry Pi 5のNASの転送速度

Raspberry Pi 5にはメインメモリーが4GB版と8GB版がありますが、今回検証に使用するのは4GB版です。8GBは品薄で手に入りにくいのと、使い方によりますが、Raspberry Piに8GBのメモリーは過剰であると思いましたので、より安価な4GB版を入手しました。5GBのテスト用ファイルをコピーした時の転送速度は下記の通りです。上がNASへの書き込み、下が読み込みです。

転送速度は書き込み、読み出し共に110MB/s程度で安定しています。予想されたボトルネットの1000BASE-T(ギガビットイーサー)の理論値である125MB/sに近い値であり、規格の性能をフルに引き出した予想通りの結果と言えます。

Raspberry Pi 5からはPCI Expressに対応していますので、M.2のSSDを載せるのが話題になっていますが、NAS用のストレージとしては転送速度にはあまり意味がないでしょう。USB接続の外付けSSDも同様です。

まぁしかし、100MB/sオーバーですので、NASとしては十分な転送速度だと思います。

Raspberry Pi 4のNASの転送速度

Raspberry Pi 4 model Bにもメインメモリーが2GB版、4GB版、8GB版がありますが、やはり4GB版です。同じく上がNASへの書き込み、下が読み出しです。

Raspberry Pi 4はRaspberry Pi 5と同じくUSB3.0、1000BASE-T(ギガビットイーサー)に対応していますので、予測された規格上の転送速度はRaspberry Pi 5と同じ125MB/sだったのですが、実測では及びませんでした。転送速度にもムラがあって安定していません。特にNASへの書き込みは30~40MB/sと、理論値から見ると残念な値になっています。

気になるのは、テストを始めた頃にはRaspberry Pi 5と同じく110MB/sくらいが出ていて「変わらないじゃん」と思ったはずなのです。ネット上で見て回っているとRaspberry Pi 4で100MB/sオーバーの転送速度を出している記事と、私と同じく40とか80MB/sの記事もあり、よくわかりません。少なくとも、今は条件を変えて何度試行しても上記のような値になります。

原因を切り分けるために、iperfを使って計測に使用しているRaspberry Pi 4とWindows PCの間の通信速度を計測してみました。

942Mbps(117MB/s)とギガビットイーサーとしての通信速度が出ています。ネットワークは問題なさそうです。次にhdparmにてUSB HDDの速度を計測してみました。

こちらは105MB/sと本来の性能の半分くらいの性能です。それでも転送の実測値とは乖離が大きいのですが、Raspberry Pi 4ではUSB周りの不具合も報告されていますし、なにかあるのかもしれません。それとも単にCPUや周辺チップの性能差なのでしょうか?

Raspberry Pi 3 model BのNASの転送速度

手元にはRaspberry Pi 3 model B+がありませんので、model Bにて実測した結果です。Raspberry Pi 3 model BはUSB2.0、100BASE-Tですので、Raspberry Pi 4や5よりもスペック上でかなり劣ります。このスペックから予想される通信速度は理論値で12.5MB/sと、ざっくり1/10です。

実測値は書き込み、読み出し共に理論値の12.5MB/sを若干下回る11MB/s程度です。このことからmodel B+においても、予測値の37.5MB/sを少し下回るくらいの転送速度になるのではと思われます。

11MB/sと言えばNASとしても遅めの分類で、こまめにファイルを読み書きすると多少遅さを感じますが、実はファイル倉庫としては十分に実用に足る範囲です。実際に、私はRaspberry Pi 4を発売時に購入していたのですが、入れ替えが面倒で、そのままRaspberry Pi 3 model BでNASを運用していました。例えばNASに置いているMP4動画をFire TV StickやPC上で再生しても、全く問題なく再生できます。動画の転送レートはBlu-rayでも最大40Mbps(5MB/s)ですので11MB/sでも余裕なのです。


Raspberry Pi 3 model BとRaspberry Pi 5は予想した理論値に沿った実測値となりましたが、Raspberry Pi 4だけは、なにか気持ちの悪い結果になりました。あの100MB/sオーバーの転送速度は勘違いだったのか?その後のテスト中になにかが変わってしまったのか?相当な時間をかけて色々と検証したのですが、転送速度はここに掲載した結果から変わることはありませんでした。Raspberry Pi 5用に使っていたSDカードでそのまま起動しても同様でしたので、ソフトウェア的なものではなくハードウェアレベルの何かだと思うのですが、なんなのでしょう?

何れの場合でもUSB HDDの性能を引き出せていませんので、NASの速度面を考慮してSSDなどの高速なストレージを用意する意味はありません。Raspberry Pi 5ではUSB接続の2.5GBASE-Tアダプターを挿すなどすれば、まだまだ速度向上する余地がありますので、また機会があれば試してみたいところです。

スペック的にはRaspberry Pi 5とRaspberry Pi 4で作ったNASは同性能になるかと思ったのですが、実際には実測値にかなりの差が出ました。「Raspberry Pi 4の方が安価ですので、NAS用途であればお勧めです!」というシナリオだったのですが、結局「予算があれば、より新しいモデルが良いです」という身もふたもない結果になってしまいました。