手持ち夜景撮影用に明るくてIS(手ぶれ補正)搭載のレンズ「EF35mm F2 IS USM」をしばらく使い込んでみましたので、三脚禁止の観光地のライトアップなどで手持ち撮影ができるかなどレビューしたいと思います。
三脚立てたいのは山々ですが。。。
なぜか明るいF値を持つ広角~標準域にIS(手ぶれ補正)が搭載されているレンズってなかなかないですよね。ネットでググってみるとベテランっぽい方が「三脚を使うべき」「広角にISは必要ない」なんて持論を展開されているのを良く見ます。もちろん三脚が使える状況であれば使うのですが、ライトアップされているような観光地の多くでは三脚は禁止されていますし、禁止されていなくても混雑していて物理的に無理なことがほとんどです。私は京都の神社仏閣などをまわるのが好きなのですが、まあほぼほぼ全て三脚禁止です。
例えばこれは京都の夜景の定番である清水寺の紅葉ライトアップへ行った時の写真です。もちろん手持ちで撮影しています。
カメラは「EOS 5D MarkIII」レンズは「EF24-100mm F4L IS USM」で、絞りはもちろん開放のF4にシャッター速度1/15秒です。
こうして見ていると綺麗に撮れていると思いますが、等倍に拡大してみると、、、、
絞りは既に開放のF4、シャッタースピードもこれ以上はちょっと手ぶれが怖いといった状況で露出を得るためにISO感度を6400まで上げて撮影しています。ノイズでボソボソになっているのがよくわかります。5D MarkIIIはセンサーサイズがフルサイズですので拡大しなければノイズは目立たないのですが、センサーサイズがAPS-Cのカメラだと更にきびしい感じになるはずです。
なぜか希少な手ぶれ補正付きの明るいレンズ
暗い所で手持ち撮影に必要なのは「明るい小さなF値」「強力な手ぶれ補正」です。明るい単焦点レンズというのは少し高価ながらもF1.4などの単焦点レンズが各メーカーからラインナップされていますが、なぜかこれらのレンズには手ぶれ補正が搭載されていません。レンズ内手ぶれ補正の場合には手ぶれ補正用のレンズが1枚増えてしまいますので少なからず画質にも影響が出るためだったり、単純に大口径のレンズを動かすのが大変なのでしょう。もちろん手ぶれ補正がなくてもその分明るければ良いのですが、手ぶれ補正は最低でも2段分はあると思います。つまり絞り開放F2+手ぶれ補正2段分のレンズに手ぶれ補正なしで同一露出とするためには絞り開放F1のレンズが必要となります。
絞り開放F2 + 手ぶれ補正2段分 = 絞り開放F1 + 手ぶれ補正なし
そんな中で風景撮影に適した30~50mm程度の画角で手ぶれ補正を搭載している明るいレンズというば、キャノンEFマウントでは下の2本になります。
純正であることと、入手時期には価格差が大きかったこともあって、キャノンの「EF35mm F2 IS USM」を入手しました。現在は価格差が小さくなっていますので、更に1/3段明るくて評価も上々なタムロン「SP35mm F1.8 Di VC」もありだと思います。同価格帯に画質の評価が非常に高いシグマのArtレンズもありますが、手ぶれ補正が搭載されていないので今回は対象外です。
フードなしで5Dクラスに付けると小さく見えますが、フードを付ければなかなか貫禄があってカッコ良いと思います。重量は335gと非常に軽量です。タムロンの「SP35mm F1.8 Di VC」は480gですので30%も軽量です。カメラ始めた頃は重量なんかよりも画質だろ!と思っていましたが、色々なところに機材を担いで行っている内に「軽さは正義」を実感するようになりました。特に観光地はかなり歩きますしね。
35mmの画角はAPS-Cのカメラでも50mm程度になるので使いやすいと思います。私は風景写真を撮る時にはこの35mmはジャストミートな画角の一つです。
手ぶれ補正は非常に強力!明るい&手ぶれ補正のアドバンテージを実写で比較
手ぶれ補正はメーカーの公表値のように4段分や5段分は流石にないとは思います。しかしレンズや焦点距離にもよりますが最低でも2段分はあると考えて良いと思います。
今回比較対象とするのは手ぶれ補正なしの明るいレンズではなく、手ぶれ補正搭載の「EF24-100mm F4L IS USM」ですので、開放F値で2段分(F4→F2)のアドバンテージです。単純にISO6400で撮っていた写真がISO1600で撮れることになります。
この2段分を実写で比較するべく夜の岡山城を撮ってきました。リラックスして撮った訳ではなく息を止めて集中して撮りましたが、立った状態でカメラを構えています。
まずは「EF24-100mm F4L IS USM」です。
F4 シャッター速度1/30秒 ISO6400で撮影しています。この写真も拡大しなければ充分に綺麗に撮れていますが、やはり等倍に拡大するとノイズだらけです。
次に「EF35mm F2 IS USM」で撮影した写真です。開放F値はF2となりますので、その分ISO感度を落としてF2 シャッター速度1/30秒 ISO1600で撮影しています。
ISO1600はまだノイズ感が残っていますが、ISO6400との差は歴然です。
今回は「EF24-100mm F4L IS USM」との比較ですので、開放F値の差でのアドバンテージですが、仮に開放F値が同じで手ぶれ補正なしのレンズでも同じ結果になります。例えばシグマの「Art 35mm F1.4 DG HSM」は開放F値では「EF35mm F2 IS USM」よりも1段明るいレンズですが、手ぶれ補正を搭載していないので、差し引きするとISO感度は「EF35mm F2 IS USM」よりも高くなります。「Art 35mm F1.4 DG HSM」をマウントアダプタ「MC-11」でボディ内手ぶれ補正を搭載するα7IIに装着すれば、、、と常々野望を抱いていますが、それはまた別の話ですね。静まれ!クレジットカードを握りしめる俺の右腕!
さて手ぶれ補正2段分でも、たいへんなアドバンテージであることはよくわかりましたが「EF35mm F2 IS USM」の手ぶれ補正の性能を見極めようと更に低いシャッター速度で3枚ずつ撮影してきました。私見では大体のレンズはシャッター速度1/8あたりが一つの下限だと感じていますので、1/6、1/5、1/4と1/3段ずつ1/8の半分までシャッター速度を落としていきましたが、家に帰ってPCのモニタで確認すると1/4でも3枚とも手ぶれは感じられませんでした。正直驚きです。
等倍で見ると少しユルい感じにも見えますが、シャッター速度によらずこんなものですので、絞り開放の画質によるものです。開放でこれなら充分ですけどね。シャッター速度を1/30から1/4まで3段分落とすことでISO200で撮れています。当然ノイズなど見当たりません。流石に1/4を手持ち撮影で常用とするのは少し怖いと思いますが、1/8や1/15などで余裕を持って使っていけます。
「EF35mm F2 IS USM」の画質をチャートでチェック!
チャートを使って「EF35mm F2 IS USM」の解像度の傾向を見ていきます。下の画像はチャートを各F値で撮影したものの左から「左上端」「左上の中間部」「中央」を等倍で切り出した物です。
解像度的なピークはF5.6あたりでしょうか。流石に開放F値のF2では中間部でもちょっときびしい感じですが、1段絞ってF2.8で中間部が良くなり、F4まで2段絞れば端っこまで解像度が得られます。逆にF16からは回析の影響か中央部まで含めて急激に解像度が低下していきます。解像度だけを考えればF2.8からF11までの範囲が美味しいところですね。
なかなかに使い勝手がよく、お値段以上!
開放ではユルいから少し絞りたいとは書きましたが下の写真は開放のF2で撮っています。実写してみると充分良く写っていると思います。奥側にいる人がよくボケて色々な意味で良い感じになります。
京都の祇園祭で撮った写真です。こちらも開放のF2で。
下の写真は物凄い人混みの中でカメラを頭上高くかざして背伸びして撮った写真です。被写体が動いていますし、ひどく不安定な状況で手ぶれを防ぐためにシャッタースピードを1/125秒まで上げて撮っています。開放のF2、ISO800です。こんな時はレンズの明るさが物を言います。みなさんスマホで撮影していますが、まともに撮れていないと思いますよ。
もちろん夕景でも頼りになります。鈴鹿の観覧車の夕景も手持ちで撮影しています。肉眼ではもっと暗いです。
最短撮影距離0.24m、最大撮影倍率0.24倍ですので近接撮影能力は並といったところでしょうか。下の写真は最短撮影距離から撮影しています。ダンボーくんは身長8cm程度です。
センサーサイズがフルサイズのカメラで使うと画角的に席に座ったままテーブル上の料理を撮るのに丁度良いです。下の写真は京都で撮った甘味ですが、店内は薄暗くやはり肉眼ではこの写真よりもかなり暗い状況です。画質を稼ぐ為に1段絞ってF2.8 シャッター速度1/8秒 ISO200で撮影しています。夜景ではありませんがこのレンズの性能が活かされるシチュエーションでした。団子のタレの感じとか良く捉えていると思いますが如何でしょう。クリックでもう少し大き目の画像が見れますので是非。
あとがき
高価なレンズと比べるとなにか物足りないと感じることもあるのですが、6万円程度の実勢価格ですので確実にお値段以上の実力です。より良い画質を求めるというよりは「他のレンズでは撮れない写真を撮るためのレンズ」だと思います。安価で軽量なレンズですし、1本持っておけば必ず「持っていて良かった」と思う時があるでしょう。
ではまた!
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