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PC

グラフィックス性能が大幅向上したRyzen 7 8000Gシリーズは本当にコスパが良いのか?

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インテルの14世代Coreがパッとしなかったこともあり、今年前半はAMDのRyzen 8000Gシリーズが話題を独占しているように思います。内蔵GPUがかなり強くなりエントリークラスのGPU並みのグラフィックス性能という下馬評なのですが、大したことないと一刀両断する意見もあります。そんなRyzen 7 8700GとRyzen 5 8600Gについて、よく比較対象としてあげられるGTX1650を基準にコストパフォーマンスを考察していきたいと思います。

CPUの性能比較

まずはCPUとしての性能を、他のCPUの実勢価格から相当額を割り出してみます。CPUのベンチマークはCinebench 2024の値をcpu-monkeyからの引用しています。
Cinebench 2024 (Single-Core) – cpu-monkey
Cinebench 2024 (Multi-Core) – cpu-monkey

Single/Multi 実勢価格
Core i5 13500 112/1187 3.8万円
Ryzen 7 7700 108/1050 4.6万円
Ryzen 8700G 104/986 5.8万円
Core i5 12600K 105/909 3.3万円
Ryzen 5 5700X 93/852 2.5万円
Ryzen 7 7600 95/840 3万円
Ryzen 5 8600G 101/770 4万円
Core i5 12400 102/701 2.5万円
Ryzen 5 5600 85/657 1.7万円

Single-CoreとMulti-Coreで順位は多少前後するのですが、総合性能の観点からMulti-Coreの値順で並べています。現在の入手性や価格を考慮すると8700Gや8600Gとピタリと一致するベンチマーク値のCPUは見当たらないのですが、前後のCPUを見る限り、8700Gは4万円くらい、8600Gは2.7~2.8万円くらいの価格に相当する性能であると言えます。

GPUの性能比較

Ryzen 8000Gシリーズの内蔵GPUは、メモリーの動作クロックによって大きく性能差が出ると言われていますので、定格の5200MHzと、OCの6400MHzのメモリーを使用した値をピックアップしています。現在の相場では32GBで4,000円程度の価格差です。

3DMark Time Spyのベンチマーク値をASCII.jpから引用して一覧にしました。
環境によってはGTX 1650に匹敵!?Ryzen 7 8700G&Ryzen 5 8600Gの実力は脅威 – ASCII.jp

Time Spy 性能比
GTX1650 4037 100%
8700G(OCメモリー) 3597 89%
8700G 3085 76%
8600G(OCメモリー) 3034 75%
8600G 2660 66%

GTX1650に対しての性能比を一覧にしてみました。この数値を見ると、8700Gに6400MHzのOCメモリーを使用してもGTX1650には10%以上の差があります。この差を大きいと思うか小さいと思うかは人それぞれだとは思いますが、定格では25%以上の性能差があり、よく言われる「GTX1650並み」というのはちょっと乱暴かなと思います。6400MHzのDDR5メモリーは「定格ではない。あくまでオーバークロックのメモリー」であり、5200MHzのDDR5メモリーとの価格差はエントリークラスの話をしている時には、そこそこ痛いものです。

GTX1650を搭載するグラボは品薄で、価格的な相場も難しいところですが、現在は3万円くらいの感じです。

GTX1650を3万円とした時に、性能比から割り出されるGPU性能の相当額を求めてみました。

GPU性能の相当額
GTX1650 3万円(基準)
8700G(OCメモリー) 2.7万円
8700G 2.3万円
8600G(OCメモリー) 2.3万円
8600G 2万円

Ryzen 7 8700GとRyzen 5 8600Gのコストパフォーマンスは?

上記のCPUとGPUのベンチマーク値から割り出した性能相当額を加算して一覧にしたものが下の表になります。

性能相当額
(CPU + GPU)
実勢価格
(CPU + OCメモリーの差額)
8700G(OCメモリー) 4 + 2.7 = 6.7万円 5.8 + 0.4 = 6.2万円
8700G 4 + 2.3 = 6.3万円 5.8万円
8600G(OCメモリー) 2.7 + 2.3 = 5万円 4 + 0.4 = 4.4万円
8600G 2.7 + 2 = 4.7万円 4万円

実勢価格は8700Gが5.8万円、8600Gが4万円ですが、OCメモリーの場合には32GBの差額を4,000円加算します。8700Gを見るとOCにより向上した性能相当額が、OCメモリーの差額できっちり相殺されていて世知辛さを感じますね。ただ、単純に数値を見れば、いずれの場合でもGTX1650を基準とすると性能相当額よりも実勢価格が下回っており、コストパフォーマンスに優れていると言えます。

また、8000シリーズは、CPUと別にグラボを挿すことと比較すると、システム全体でアイドリングでも30W、高負荷時では100Wくらい低消費電力になようです。いわゆるワットパワーで言えば圧倒的に良い値です。そういった意味でもコストパフォーマンスが高いと言えます。

よく指摘されるようにレーン数が少なく拡張性が低いことなど、ダウングレードされている部分もありますが、かなり高価なグラボを追加で挿すとか、M.2のSSDをたくさん挿したい場合に問題となるものですので、そのレベルでコストを投入する人は、最初からもっとガチなCPUをチョイスするのではないでしょうか。Ryzen 8000Gはミニマムな構成で最低限のゲーミング性能を得るためのCPUです。

Ryzen 8000Gシリーズよりもコストパフォーマンスが高いCPUとグラボ

よく比較対象に上げられるGTX1650を基準とすると、Ryzen 8000Gシリーズはコストパフォーマンスが高いと言えるのですが、現在はGTX1650は品薄で、価格的にもちょっとコストパフォーマンスが高いとは言えない感じになっています。

現在、コストパフォーマンスが際立っているグラボの一例がRX6400です。

この製品は2.2万円ですが、その性能はGTX1650と同等です。しかも最近話題のAFMF(AMD Fluid Motion Frames)に対応しています。AFMFは実際にレンダリングされたフレームの間を補完するフレームを生成して挟むことで、フレームレートを向上させる技術で、実際にかなり効果的なようです。

このRX6400を、AmazonのCPU売れ筋ランキング1位のRyzen 7 5700Xと組み合わせることで、

8700Gよりも「1万円安価」に、8700Gと比較して「CPUは10%ちょい弱いけど、GPUは10%ちょい強い」組み合わせができます。

更に、上記のセットに1万円追加(つまり8700Gと同等の価格)すると、RTX3050やRX6600にアップグレードできます。

RX6600は8700GのGPUのほぼ2倍の性能になります。もちろんAFMFに対応していますので、GTX1650に対してはベンチマーク値以上の差がでます。

このRTX3050は最近発売した製品で、ロープロファイル&補助電源不要の省電力で話題になりました。補助電源ありのRTX3050に比べると多少性能は劣りますが、GTX1650の1.5倍の性能がありますし、DLSSに対応しますので現実的なフレームレートではベンチマーク値以上の圧倒的な差が出ます。このように上手くコストパフォーマンスの高いCPUとグラボを組み合わせることでRyzen 8000シリーズを上回るハイコストパフォーマンスのゲーミングPCを組むことができます。

ただ、先に書いたようにRyzen 8000シリーズはGPU込みでの消費電力が極端に低くなります。トータルで100Wも変わってくるようだと、電気代も無視できない差が出てきますので、このあたりは一考の余地があると思います。


使用しているデスクトップPCがそろそろ更新時期であることや、趣味である写真撮影の画像処理にGPUが欲しくなったこともあり、個人的に気になりましたので、自分用に調べた内容をまとめてみました。

言われているように、革新的なコストパフォーマンスという訳ではないと思いますが、私のように「ゲームメインではないけど、そこそこのGPUが欲しい」「ゲームはフルHDでそこそこ動けば良い」「普段はGPU性能は必要ないのに無駄に電力を消費したくない」ような人には良いCPUだと思います。THE「こういうのでいいんだよこういうので」ですね。