プライムビデオで「ククルス・ドアンの島」の配信が開始されています。もちろんプライム会員は無料で見ることができます。私は友人に誘われて、劇場公開された時に見に行きましたが、今回の配信に合わせて感想をぶちまけたいと思います。この作品にはネタバレというほどのネタはありませんが、内容にガンガン突っ込みを入れますので、未見の方は読まないようにしてください。結論から言えば、とても残念な作品だと思っています。
元々、THE ORIGINから違和感を感じていました。
拳を振り上げて大声で唾を飛ばしながらセリフと言うキャラとかガンダムには必要ないのですよ。思慮深かったり、目で語るおっさんを見たいのです。
一番残念だったのが、スペースノイドの父、ジオン・ズム・ダイクンです。ジオン・ズム・ダイクンという偉大な思想家がいたから、その偉大な思想家が人類の革新を説いたから、ジオンの独立戦争にも説得力が出てくる訳です。宇宙世紀ガンダムのすべての土台といっても良い人物でしょう。
それが、なにかアレな感じの人として描かれてしまっています。「偉大な思想家にもこんな一面もある」とかならわかるのですが、アレな感じしか描かれていません。好意的に見れば「スペースノイドが信じて戦ったジオニズムなんて実際にはこんなもの」という風刺とも取れますが、ファンが見たいのは違う気がします。
他のキャラクターもいちいちオーバーリアクションでワザとらし過ぎます。ばつが悪そうにニヤついている印象しか残らないのです。それはカイの専売特許だったわけですが、そのカイですらやり過ぎ感しかありません。
WB隊の出オチ感
©創通・サンライズ
WB隊の「いっちょやってやろうぜ!」感はやはりワザとらしいのですが、まぁクライマックスへ向けて盛り上がっていきました。抑揚のない子供ドラマを延々と見せられて退屈していた頃ですので、否応にも盛り上がります。スレッガージムがコアブースターに乗って出撃した時には「うぎゃープラモほしーーー」と思ったものです。
ところが、勇ましく登場したものの、戦果は偵察機であるルッグンを2機撃ち落としただけ。しかもその時に被弾して墜落からのクビチョンパです。なにこれ。。。アムロが囲まれて苦戦している時にビームライフルで援護しながら、ベタに「間に合ったぜ」とか言ってほしかった。
ガンキャノンに至ってはさらに悲惨です。1mmも戦果をあげられずに、2機とも一方的にやられて大破。ハヤト機は再起不能でしょう。本当になにをしに行ったの?(なにをしに行ったのかは後で説明します)
お爺ちゃんにやらせるから、こんなんになっちゃった。
本作には必要のないものがたくさん出てきます。まず先のWB隊の4機とパイロット。それからなぜかガンペリー(搭載機を降ろしたらさっさと戦闘空域から離脱しろよ。。。)に乗っていたフラウ。フラウは仮にも(マジで仮ですが)軍服を着ていますので、百歩譲ってなにか仕事があるのかもとして、カツ、レツ、キッカがガンペリーに同乗しているのは本当に謎です。どう考えても謎です。
しかし、クライマックでその謎は解けます。
©創通・サンライズ
そう、ドアンやアムロを「皆で応援させるため」です。無駄に出撃してザクにも羊にもボコられたWB隊と、か弱い女子と子供達を、ステージ脇に集めて「がんばれ~~!」させるためです。地形すらも「がんばれ~~!」に最適化されていたのです。
©創通・サンライズ
ドアンのピンチにガンダムが登場するシーンは、正直かっこいいと思いましたが、集められた応援団がワザとらしく「ガンダムだぁー」とか「やっときたかー」とリアクションしているのを見て瞬時に醒めました。
家庭を持った真っ当なお爺ちゃんは、もう飛行機やロボットなんかには興味はなく、孫がかわいいだけの凡人になってしまうのです。そのお爺ちゃんに作らせたら、こうなってしまうのは必然なのかもしれません。
「ククルス・ドアンの島」の原作もプライムビデオで見ることができます。
機動戦士ガンダム 第15話 ククルス・ドアンの島 (プライムビデオ)
ドアンがエースであるような描写はありませんが、投石でコアファイターを撃墜するあたり、とてもタダ者とは思えません(笑) あと、緑豊かな島は劇場版よりも住みやすそうです。劇場版の島はとても自給自足できるとは。
安彦氏は本作を最後に引退を表明していますが、既にTHE ORIGINとして1年戦争を描いたマンガがあり、前日譚がアニメ化されていますので、仮にファーストガンダム本編がリメイクされるとしても、このキャラのテイストが継承される可能性は高いでしょう。個人的には至極残念です。
劇場公開当初のSNSでは好意的なものが多くて違和感を感じました。何を言ったかよりも誰が言ったかのほうが大切と言いますが、みんな巨匠のネームバリューに弱すぎるのか、メカアクションのクオリティは高いので、そちらに評価がひっぱられているのか、単に「なんでも受け入れる懐の深い俺」をアピールしているだけなのか。。。
ただ、最新のクオリティでRX-78-2が戦うところを見れたことには、素直に感謝したいと思います。