個人的には場合PS5でゲームをプレイしていて一番良いなぁと実感するのはロード時間の短縮でした。しかしネットを見ていると「期待ほどではない」といった論調が多く見られます。こんなに速いのに!?そこで今回はそういった人達が勘違いしているのではないか?と言う話と、PS4とPS5、PS5での内蔵SSDと外付けSSDなどロード時間の違いを実測した結果を紹介しようと思います。
PS5はロードが100倍速い!?
PS5のSSDの速さを語るときに「100倍速い!」という部分だけが強調され、あまつさえ「それなのにロードはそんなに速くなっていない!」なんて表現が散見されますが、ちょっと考えればそんな事にならんだろう。。。というのはわかるはずです。なぜ、そんな話になっているのでしょうか?
「100倍速い」のソースを辿ると、そもそもソニーが発表したのは「PS4に搭載されているHDDから」「5GB/sの帯域」「50~100倍の帯域」という内容です。
HDDから100倍速いSSDは一般的になりつつある
まず「5GB/sの帯域」の部分です。5GB/sは換算すると大体5000MB/sなわけですが、この速度のSSDは一般に手に入ります。いままで世の中に存在しないような特殊なSSDが搭載されているわけではありません。まだ少し高価(PS5発売時はとても高価だった)ですが、PCI Express 4.0×4に対応したSSD、たとえば下の製品がこのくらいの速度です。
更に高価な製品では8,000MB/sなんて速度のSSDもありまして、5,000MB/sというのはPCI Express 4.0×4の中ではローエンドな速度です。ローエンドとは言ってもまだPCI Express 4.0×4自体が最新の高速な規格ですので、この規格に対応しているというだけで爆速ですけどね。今一番の普及帯であるPCI Express 3.0×4の製品だと一般的には2,000MB/s程度、速いもので規格の理論値いっぱいの4,000MB/sくらいの速度がでます。
HDDの場合はプラッタの内側に書き込まれるか外側に書き込まれるかでも全然速度は違いますし、シーケンシャルリードかランダムリードかでも文字通り桁違いですので、HDDの速度は同一個体でみてもバラつきが大きくて一概には言えないものですが、5GB/sのSSDがHDDよりも「50~100倍速いか?」かと言えば「まぁそのくらい」です。
「PS4に搭載されているHDDから」と言っているのに「たいして速くない」と言っている人の中にはSSDに換装したPS4と比較していたりして、そこはまず論外ですね。いや、SSDに換装したPS4と比べてもPS5は相当速いのですけどね。
誰も「ロードが100倍速くなる」とは言っていない
「では、HDD搭載のPS4からロード待ちの時間が100倍短くなるのか?」といえばそんなことはありません。Windows PCの起動ディスクをHDDからSSDに換えたからといって、PCの起動時間は1/100にはなりませんよね?ロード時間はストレージからデータを読み出す以外に、アクセスしやすいように展開したりメインメモリーに配置したりといった処理も行っているのですから。
「データの読み出し速度が100倍になる」と言っているだけで、「ロード時間が1/100になる」なんて誰も言っていないのです。このあたりが「たいして速くない」と言っている人達が問題を取り違えているポイントです。
実際のロード時間はPS5でどのくらい速くなっているのか?
では、どのくらい速くなっているのか?を数パターン実際に計測してみました。
使用した外付けSSDは、M.2接続SATAのSSDを、USB 3.1 Gen2のエンクロージャーに入れたものです。USB 3.1 Gen2は理論値で1280MBpsですが、SSDの最高速が560MBpsですので、使用した外付けSSDの最高速は560MBpsとなります。PS5の内蔵SSDの丁度1/10くらいの速度ですので、この外付けSSDとPS5の内蔵SSDとの差にも注目です。
ネットワークにログインしたり、操作が必要なところなど、本体の処理速度とは関係ない部分で計測するようにしています。また、毎回PS本体を再起動してから計測しています。
モンスターハンターワールド
モンスターハンターワールドの起動時です。PSのメニューでソフトを選択してから「ご注意」が表示されるまでを計測しています。
PlayStation 4 | 内蔵HDD | 30.16秒 |
---|---|---|
外付けSSD | 18.06秒 | |
PlayStation 5 | 内蔵SSD | 7.9秒 |
外付けSSD | 7.7秒 |
PS4でのHDDとSSDの差も2/3以下、10秒以上短縮していますが、PS5ではなんと更に10秒も短縮して8秒程度になっています。体感的にもかなり短く感じます。相当ヤバいです。しかし不思議な事にPS5の内蔵SSDと外付けSSDには差が見られません。なぜでしょう。
次に拠点から狩りに出発してからキャンプが表示されるまでを計測しています。いわゆるマップのロードで、ゲーム中もっとも頻繁に発生する待ち時間ですね。
PlayStation 4 | 内蔵HDD | 1分 5.70秒 |
---|---|---|
外付けSSD | 29.04秒 | |
PlayStation 5 | 内蔵SSD | 20.0秒 |
外付けSSD | 19.6秒 |
こちらもPS4でSSDになった時点で半分、30秒以上も短縮しています。この時点で効果絶大ですが、PS5では更に10秒、20秒程度まで短縮しています。HDDでプレイしていた頃は、狩りに出発するのは気持ち的にもかなりどっこいしょでしたが、このくらいの時間になると気軽にプレイできますね。しかし、ここでもPS5の内蔵SSDと外付けSSDには差が見られません。
ファイナルファンタジー 7 リメイク
ファイナルファンタジーでは起動時のみ計測しています。PSのメニューでソフトを選択してから最初にロゴが表示され始めるまでです。
PlayStation 4 | 内蔵HDD | 37.31秒 |
---|---|---|
外付けSSD | 29.03秒 | |
PlayStation 5 | 内蔵SSD | 16.5秒 |
外付けSSD | 17.42秒 |
こちらはPS4でのSSDではモンハンほどの効果は出ていませんが、PS5ではロード時間は半分程度、15秒弱短縮しています。こちらもPS5での速度アップは大きいですが、モンスターハンターワールドと同じくPS5の内蔵SSDと外付けSSDには差が見られません。特定のゲームソフトだけの問題ではなくPS4版に共通しているようです。
グランツーリスモ SPORT
グランツーリスモ SPORTの起動時です。PSのメニューでソフトを選択してから、最初にSONYのロゴが表示され始めるまでを計測しています。
PlayStation 4 | 内蔵HDD | 16.5秒 |
---|---|---|
外付けSSD | 12.9秒 | |
PlayStation 5 | 内蔵SSD | 4.8秒 |
外付けSSD | 4.69秒 |
PS4でHDDからSSDに変更した時よりもPS5になった時の方が圧倒的に速度アップしています。本当にすぐに起動する感じです。
次にシングルレースでコースや車両を選択してからコースのメニューが表示されるまでです。コースや車両のデータを読み込んでいるはずです。コースを変えるたびに発生するロード時間ですので、プレイ中に最も短縮が望まれる部分です。
PlayStation 4 | 内蔵HDD | 30.56秒 |
---|---|---|
外付けSSD | 27.6秒 | |
PlayStation 5 | 内蔵SSD | 16.2秒 |
外付けSSD | 15.5秒 |
ここも起動時と同じくPS4でHDDからSSDに変更した時よりもPS5になった時の方が大幅に早くなっています。同じ外付けSSD同士でも半分くらい、15秒もの短縮となっていて、このくらいになると次々と走るコースを変えるのも苦になりませんね。おそらくストレージからデータを読み出すよりも、それをメモリーに展開したりとCPUやメインメモリーの速度に依存する処理が多いのでしょう。
何れにしろ、PS4版のゲームをPS5でプレイするだけで、ロード待ち(というか処理待ち)は格段に短くなるのは間違いありません。
PS5は確かに速いけど、PS5のSSDは速い?
ここまでの検証でHDDからならば言うに及ばず、PS4のSSDでプレイしていたゲームをそのままPS5でプレイしただけで、ロード時間などの待ち時間が一気に早くなるのは確認できましたが、なぜかPS5の内蔵SSDと外付けSSDではいずれも変わらないという結果になりました。SSDのスペック的には10倍近い差があるにも関わらずです。
色々と考察はできるのですが、とりあえずPS5版のゲームとしてウォッチドッグス レギオンをサンプルにPS5版のゲームを内蔵SSDで動作させた場合のロード時間を計測してみました。
PS5版のゲームは内蔵SSDにしかインストールできませんので、PS5版同士で内蔵SSDと外付けSSDの速度差を計測することはできません。しかし、ゲーム内のグラフィックはPS4版とPS5版で大きな差はありませんので、ロードするデータ量にも大差はないと思われます。
「続ける」を選択してからゲームが開始されるまでの時間を計測しています。
PlayStation 4 | 内蔵HDD | 1分 16.42秒 |
---|---|---|
外付けSSD | 59.09秒 | |
PlayStation 5(PS4版) | 内蔵SSD | 35.7秒 |
外付けSSD | 35.17秒 | |
PlayStation 5(PS5版) | 内蔵SSD | 19.52秒 |
PS4版をPS4のSSDとPS5で比較してもPS5は驚異的に速くなっていますが、PS5版はさらに半分強(55%程度)まで短縮しています。本当に速い。
ここまでの特徴を列挙すると
1. 同じSSDでもPS5はPS4より倍弱くらい速い
2. PS4版の場合はPS5の内蔵SSDと外付けSSDで速度は変わらない
3. PS5版はPS4版より倍弱くらい速い
PS5ではより高速にデータを読み出し&展開するためにPS4とは異なる新しい形式でデータが保存されています。そしてそのデータの読み出し&展開はPS5に搭載されている専用のカスタムチップによってハードウェア処理されています。
おそらく、PS4用のデータ形式にこのカスタムチップが対応しておらず、CPUにてソフトウェア処理されるためにPS4版のロード時間はPS5版に大きく及ばないのでしょう。そもそもPS4版よりもPS5版は性能向上しているという話ですしね。
これも推測に過ぎませんが、PS5の内蔵SSDと外付けSSDで全然差が出ないのは、このソフトウェアによるデータの処理速度が今回の外付けSSDの読み出し速度である560MBpsよりも遅いために、どんなに速いSSDでも速度が変わらないという結果になるのだと思います。
PS5に最適な外付けSSDは
これらのことから、現状ではPS5に接続する外付けSSDは500MBs程度の速度の安価な製品か、もしくは汎用性を考えて内蔵用をエンクロージャー(外付けケース)に入れて使用する場合でもSATA接続のもので十分です。そして内蔵SSDはPS5版用に空けておいて、PS4版は外付けSSDにインストールするのが効率的と言えます。今後アップデートにてPS4版の読み出し速度が上がったとしても、外付けはUSB 3.2 Gen2の10Gbps(≒ 1280MBs)接続ですので、せいぜい倍の速度です。SSDの速度が倍になったからといってロード時間が半分になる訳ではないのは説明済ですね。
私は余った内蔵SSDをエンクロージャーに入れて使用していますが、PS5用に購入するならという視点で外付けSSDの一例を挙げると下記のような製品になると思います。1050MBsはPS5で使用する前提だと少々オーバースペックですが、十分に安価ですので気にすることもないでしょう。
このあたりのSSDの規格や速度の見方については、下の投稿にて簡単にまとめています。
【M.2?NVMe?】ざっくりわかるSSDの選び方 |
いろいろとあるけど、PS5のロードは激速です。
今回の検証をまとめると、PS4版のゲームソフトでPS4とPS5の速度差はCPUやメインメモリーなどのストレージ以外の性能差、PS5でのPS4版とPS5版の速度差はストレージの性能差と言えるでしょう。どちらも激速ですね。個人的にはPS5の最大のメリットだと思います。
PS4版のゲームソフトであってもPS5でプレイすると大幅にロードが速くなります。「100倍速いと言っていたのに!」という人には物足りないのかもしれませんが、PS4のSSDからでも概ね半分近いロード時間になっており、驚異的な速さだと思います。30秒から15秒を削るのって無茶苦茶凄いと思いますよ。グランツーリスモSPORTのコースや、モンスターハンターワールドのマップのロードはゲーム中に何度も通るところですので、体感的にもかなり効果を感じます。
PS5にはUSB接続の外付SSD以外にもマザーボード上にPCI Express 4.0×4のM.2スロットを備えていますが、現在はまだ使用できません。アップデートで使用できるようになるとのことですので、どのような仕様になるのか楽しみですね。