EOS Rの廉価機種「EOS RP」がフルサイズミラーレスカメラとしてはなかなかインパクトのある価格で登場しました。しかもEOS Rに対してかなり軽量コンパクトにシェイプアップされています。そんなEOS RPをEOS Rや、価格的にガチンコ勝負となるα7IIと比較してお買い得度をはかっていきたいと思います。
小さく軽い!
EOS Rはミラーレスカメラとしては少々大型のボディで登場しました。私は今後の発展性や操作性を考えるとEOS Rのボディサイズには好意的ですが、SONYのα7シリーズやNikonのZシリーズに比べるとデカい重いとやり玉にあげられていたのも事実です。
しかしCanonは元々小さなカメラを作るのは得意でEOS Kissシリーズなどは手に取るととても一眼レフとは思えないほど軽量コンパクトです。Canonといえばプロやハイアマ向けの高級機のイメージが強いのですが、実際にはこれら軽量コンパクトなエントリーモデルが異常に充実しています。EOS Rも登場時には高画素の高級モデルの噂がありましたが、私は廉価機が先だと思っていました。
そして登場したのがEOS RPです。EOS RPはEOS Rからかなりドラスティックに小型化され、重量も660gから175g軽量化されています。これは36%もの軽量化にあたります。
EOS RP | EOS R | α7II | |
---|---|---|---|
サイズ | 132.5 x 85 x 70 mm | 135.8 x 98.3 x 84.4 mm | 126.9 x 95.7 x 59.7 mm |
質量(バッテリー込) | 485g | 660g | 599g |
質量比 | 100% | 136% | 124% |
ライバルとなるα7IIに対しても114gも軽量です。
しかし実はこれには突っ込みどころがあります。EOS RPとα7IIを比較した場合に一番大きな違いとなるのはボディ内手振れ補正の搭載有無です。α7IIは磁気でイメージセンサーを動かす強力な手振れ補正を搭載していますが、EOS RPはボディ内手振れ補正を搭載していません。α7IIとの100g程度の重量差はこのユニットの有無といって間違いないでしょう。
ではボディ内手振れ補正を搭載していなかった初代α7の重量はといえばバッテリー込みで474gと、若干ですがEOS RPよりも軽量です。これがEOS PRが「EOS史上最軽量フルサイズ」であっても「世界最軽量フルサイズ」ではない理由です。あと10gだけ軽量化できていれば「世界最軽量」を名乗れたのですが、、、
とは言えEOS RPは「ほぼ」世界最軽量フルサイズミラーレスであり、非常に軽量であることには変わりはありません。
α7IIにガチンコの低価格
Sonyのフルサイズミラーレスというとα9やα7RIIIなどの超高性能機種が話題になりますが、実際にその人気を支えているのは廉価モデルとしてラインナップされているα7IIの存在だと思います。ボディ内手振れ補正を搭載しているため、手振れ補正を搭載していない大口径単焦点レンズなども手持ちで使え、軽量コンパクトでミラーレスとしての使い勝手の良さもあり、画質も十分。それが10万円台前半の価格で買えてしまいます。スポーツ撮影などの動体には対応できませんが、私のように超望遠での動体撮影は一眼レフを使うので風景やスナップ用にサブとして購入する人も多いでしょう。
今までは、この価格帯でのフルサイズミラーレスはα7IIの独占でしたが、そこへEOS RPが真っ向勝負を挑んできた形になります。
EOS RP | EOS R | α7II | |
---|---|---|---|
価格(税抜) | 160,500円 | 237,500円 | 149,880円 |
実勢価格(税込) | – | 210,000円程度 | 120,000円程度 |
価格はいずれの機種もオープン価格ですので、メーカーの公式オンラインショップでの価格をピックアップしています。EOS RPは登場時点ではα7IIよりちょっと高いのですが、10~20%くらいはすぐに落ちるでしょう。
EOS RPとEOS Rとの差はどのくらい?
EOS RPがEOS Rよりもかなり安価で軽量コンパクトであることはわかりました。では性能面ではどうでしょうか?どのくらい性能が抑えられているのかをスペックの一覧表にて比較してみます。
EOS RP | EOS R | |
---|---|---|
イメージセンサー | デュアルピクセルCMOS フルサイズ 35.9 x 24.0mm |
デュアルピクセルCMOS フルサイズ 35.9 x 24.0mm |
画素数 | 2620万画素 | 3030万画素 |
レンズマウント | RFマウント | RFマウント |
RAW | 14bit | 14bit |
ボディ内手振れ補正 | × | × |
オートフォーカス | デュアルピクセルCMOS AF 動画撮影時はコントラストAF |
デュアルピクセルCMOS AF |
瞳AF | ○ | ○(AF-Cは未対応) |
AFポイント数 | 4779 | 5655 |
タッチ&ドラッグAF | ○ | ○ |
測距輝度 | EV -5~18 | EV -6~18 |
フォーカスブラケット | ○ | × |
4K動画撮影 | ○ | ○ |
シャッタースピード | 1/4000~30秒 | 1/8000~30秒 |
同調シャッタースピード | 1/180秒 | 1/200秒 |
連写速度(AFAE追従) | 4コマ/秒 | 5コマ/秒 |
連続撮影可能枚数 | RAW 50枚 RAW+JPEG 42枚 |
RAW 47枚 RAW+JPEG 34枚 |
液晶モニタ | 3.0型 104万ドット バリアングル液晶 |
3.15型 210万ドット バリアングル液晶 |
EVF | 0.39型 236万ドット 倍率0.70倍 |
0.5型 369万ドット 倍率0.76倍 |
撮影可能枚数 | 250枚 | 370枚 |
動画撮影可能時間 | 100分 | 140分 |
このようにスペックを並べてみると、EOS RPとEOS Rは驚くほど性能差が小さいですよね。
AFポイントは減少していますが、9点とか15点とか言ってた頃ならまだしも、この数がベースになるともうどっちでも良いレベルです。
1/8000までのシャッタースピードや同調速度などをみるとわかるように、EOS Rには高級なシャッターユニットが採用されていますが、これも実用上での差は無視できます。
液晶モニタやEVFの精細さの差は気になるところですが、このあたりは価格なりですので致しかたありません。バッテリーもかなり小さくなっていますので撮影可能枚数も370枚から250枚へと減少しています。
一番の違いは画素数ですが、実際のところ2620万画素と3030万画素だと16%ほどの向上にとどまりますので、いうほどの差はないでしょう。
逆にEOS RPはEOS Rが対応していないAF-Cでの瞳AFや、フォーカスブラケットに対応しています。私はチキンで露出ブラケットをよく使いますので、フォーカスブラケットは良いかもしれません。でも露出ブラケットと一緒には使えないかな?
EOS RPに対してEOS Rが価格差分のアドバンテージがあるとはとても思えませんので、この2機種で迷った場合はEOS RPを購入すれば良いと思います。
結局のところEOS RPとα7IIではどちらがお買い得なのか?
さて、それではガチンコ勝負となるEOS RPとα7IIとの比較です。
EOS RP | α7II | |
---|---|---|
イメージセンサー | デュアルピクセルCMOS フルサイズ 35.9 x 24.0mm |
Exmor CMOS フルサイズ 35.8 x 23.9mm |
画素数 | 2620万画素 | 2430万画素 |
レンズマウント | RFマウント | Eマウント |
RAW | 14bit | 14bit |
ボディ内手振れ補正 | × | ○ |
オートフォーカス | デュアルピクセルCMOS AF 動画撮影時はコントラストAF |
ファストハイブリッドAF (位相差 + コントラスト) |
瞳AF | ○ | ○ |
AFポイント数 | 4779 | 117 |
タッチ&ドラッグAF | ○ | × |
測距輝度 | EV -5~18 | EV -1~20 |
フォーカスブラケット | ○ | × |
4K動画撮影 | ○ | × |
シャッタースピード | 1/4000~30秒 | 1/8000~30秒 |
同調シャッタースピード | 1/180秒 | 1/250秒 |
連写速度(AFAE追従) | 4コマ/秒 | 5コマ/秒 |
連続撮影可能枚数 | RAW 50枚 RAW+JPEG 42枚 |
RAW 25枚 RAW+JPEG 27枚 |
液晶モニタ | 3.0型 104万ドット バリアングル液晶 |
3.0型 122万ドット チルト液晶 |
EVF | 0.39型 236万ドット 倍率0.70倍 |
0.5型 235万ドット 倍率0.71倍 |
撮影可能枚数 | 250枚 | ファインダー使用時 270枚 モニター使用時 350枚 |
動画撮影可能時間 | 100分 | 100分 |
α7IIは型落ちではあるのですが、元はEOS Rと同じクラスのカメラですので、造りは非常に良いです。1/8000秒のシャッタースピードや1/250秒の同調速度を見るように高級なシャッターユニットを搭載しています。
また非常に大きいのはα7IIはボディ内手振れ補正を搭載していることです。手振れ補正を搭載しているレンズのみを使用するのであれば問題ないのですが、大口径の単焦点レンズには手振れ補正が搭載されていないことがほとんどです。例えば安価で高画質なSIGMAのArt単焦点レンズを手持ちで使おうとするとボディ内手振れ補正が必須になります。
逆にEOS RPのアドバンテージは4K動画の対応でしょうか。CanonもSONYも一眼動画には力を入れているメーカーですが、ここは世代の新しさの差がでました。4K動画が必要な人にとっては選択の余地はありませんね。
また測距輝度の範囲の広さも注目です。EV-5まで対応しているとかなりの暗闇でもAFでのピント合わせが可能です。私はα7IIで夜景を撮るときにはマニュアルでピントを合わせていますが、マニュアルでも高感度のノイジーな映像を見ながら合わせるのは一苦労ですので、AFが正確に合わせてくれるのであればかなり有用でしょう。
個人的にはボディ内手振れ補正は必須だと思っていますのでα7IIを推したいところですが、手振れ補正搭載のレンズ(ズームレンズは大体搭載しています)のみを使用する前提であればEOS RPもありかなと思います。
EOS RPはCanonの屋台骨を支える大切な機種になるかも
EOS Rは個人的には「ない」と思うのですが、α7シリーズに迫るくらい売れているらしいですね。この感じでいくとEOS RPはバカ売れの予感です。Canonは未だに裏面照射型のフルサイズセンサーを投入できていないところにヤバみを感じるのですが、シェアは相変わらず高いですし、今までに販売されたレンズの数も多い関係上、中古レンズの入手性が良く、しかも安価に手に入ります。これらのレンズ資産はマウントアダプタによってもちろんEOS RPでも活かすことができます(α7シリーズでもSIGMAのMC-11で使えますけどね)
Canonは正直なところボディはいまいちかなと思うのですが、RFマウントのレンズもかなり展開速度が速く、レンズの開発力は質量共に非常に高いレベルだと思います。写真はボディよりもレンズの方が大切ですからね。
いずれにしても、安価なフルサイズカメラに選択肢が増えたことはユーザーにとって非常に喜ばしいことです。
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