モトローラのスマホには「Turbo Power」という独自の急速充電技術が採用されています。今ひとつ情報が少ないこのTurbo Powerに、USB PDやQuick Chargeなどに対応した充電器につないだ時にどのような挙動となるのかを調べてみました。
モトローラの急速充電技術「Turbo Power」とは
付属の充電器につないだ時にはかなり速いスピードで充電される訳ですが、実際の生活では複数の部屋で充電したい場合や持ち出し用など複数の充電器が欲しいところです。
大抵はUSB PDなどの既存の充電器を所有していますし、逆にモトローラ以外のスマホに買い換えることを考慮すれば、Turbo Power専用の充電器を揃えるのは現実的ではありません。そもそもほとんど売っていません。そこで、既存のUSB PDやQuick Chargeなどの充電器につないだ時の挙動をmotorola edge 20で調べてみました。
Turbopowerは、Quick charger2.0をベースとしたモトローラ独自仕様となっております。Quick charger 2.0と互換性がございます!
— Motorola(Japan) (@MotorolaJP) November 5, 2018
ちなみに日本モトローラのTwitterアカウントではQuick Charge 2.0と互換性があるとのツイートがありましたが、その後スレが伸びていてダメなものもあるみたいという話になっています。日本法人では仕様がよくわからんというのはよくある話ですね。。。
付属の純正充電器にて充電すると画面上にはTurbo Powerと表示されて、9.2V3.2Aの30Wくらいで充電されています。
純正充電器での充電結果が下記です。アプリで計測するためにシャットダウンしている状態からOSを起動できるまでに数%充電してしまいます。そのため計測は5%からとしています。
残量 | 経過時間(累積) | 経過時間(10%) |
---|---|---|
5% | 0 | ー |
10% | 2分 | ー |
20% | 6分 | 4分 |
30% | 9分 | 3分 |
40% | 13分 | 4分 |
50% | 16分 | 4分 |
60% | 20分 | 4分 |
70% | 24分 | 4分 |
80% | 29分 | 5分 |
90% | 40分 | 11分 |
100% | 57分 | 27分 |
5%から80%まで僅か29分。10%あたり3~4分くらいです。激速ですね。
Turbo Power対応スマホをQuick Charge 2.0につないだ場合
Quick Charge 2.0と互換性があるとの事ですが、Quick Charge 2.0は最大18Wでの充電となります。検証に使用したmotorola edge 20を純正充電器(当然Turbo Power対応)で充電した場合には最大30Wでの充電が可能となっていますので、そのあたりが独自技術ということでしょうか?
Quick Charge 2.0の充電器に接続しても純正充電器に接続した時の「Turbo Power」の表示はありませんでした。
充電電力を見てみると、18Wどころか4.7V2.1Aの10Wくらいでしか充電されていません。
実際にQuick Charge 2.0の充電器にて充電した結果が以下です。
残量 | 経過時間(累積) | 経過時間(10%) |
---|---|---|
5% | 0 | ー |
10% | 5分 | ー |
20% | 14分 | 9分 |
30% | 22分 | 8分 |
40% | 30分 | 8分 |
50% | 40分 | 10分 |
60% | 49分 | 9分 |
70% | 58分 | 9分 |
80% | 67分 | 9分 |
90% | 84分 | 17分 |
100% | 112分 | 28分 |
5%から80%まで67分、10%あたり8~10分程度とスマホとしては十分な充電速度ではありますが、電圧が5VであることからQuick Chargeとしては認識されていないと思われます。「Quick Charge 2.0と互換性がある」というのは怪しい感じですね。
Turbo Power対応スマホをUSB PDにつないだ場合
現在主流となっているUSB PD(Power Delivery)対応の充電器でも充電しました。使用したのは45Wの出力に対応した充電器です。
こちらはなんとスマホ側が「Turbo Power」と認識しているようです。
供給される電力は8.3V2.8Aの23Wくらいあります。あれれ、Turbo Powerと表示されるわQuick Charge 2.0よりも全然高い電力で充電されるわで、なにか話が違いますね。
実際にUSB PDの充電器(最高45W)にて充電した結果が以下です。
残量 | 経過時間(累積) | 経過時間(10%) |
---|---|---|
5% | 0 | ー |
10% | 2分 | ー |
20% | 7分 | 5分 |
30% | 11分 | 4分 |
40% | 15分 | 4分 |
50% | 20分 | 5分 |
60% | 24分 | 4分 |
70% | 28分 | 4分 |
80% | 36分 | 8分 |
90% | 45分 | 9分 |
100% | 64分 | 19分 |
5%から80%まで36分、10%あたり4~5分程度です。純正充電器が80%まで29分でしたので若干劣りますが、かなり速い充電速度ですね。
ただし、バッテリーを使い切ってシャットダウンした状態で挿したままにするとOSが起動しても急速充電に切り替わりませんでした。一度USBケーブルを抜き差しすると急速充電になりました。
これらをグラフにまとめました。急速充電なしのパターンも追加しています。ちなみに急速充電なしでは4.8V1.4Aの7W程度で充電します。
いまさら独自規格はやめて欲しい
motorola edge 20に付属している純正充電器には下記のように記載されています。
5.0V 3.0A 15.0W
9.0V 3.0A 27.0W
10.0V 3.0A 30.0W
の3通りです。5Vと9Vの規格値はQuick Charge 2.0にもUSB PDにもありますし、10Vはどちらにもありませんので、これだけではどちらとも言えませんね。9V3Aの27Wでいいじゃんという気がします。なぜ、わざわざ10Vを独自規格で追加したのか、逆に独自規格にしたいから10Vを追加したのか。。。ちなみに9Vの次はQuick Charge 2.0では12V、USB PDでは15Vです。
この手の話は大抵、Quick Charge 2.0はともかくUSB PDに繋ぐのは大丈夫なのか?という事になるのですが、はっきり言って自己責任です。これはQuick ChargeがUSB PDがという話以前に純正以外の充電器で充電した時点で大抵の場合はメーカーは保証してくれないと思います。そりゃ粗悪な充電器に繋いで壊れた場合でも保証してくれと顧客は言いますし、スマホが悪いのか充電器が悪いのかはメーカーでは判断が難しいでしょうから。
しかし、急速充電技術は充電器と充電される側が通信して互いの仕様を確認してから供給する電力を決めます。その時点でなにかおかしな場合は通常の5Vの充電になりますので、ある程度信頼のおけるメーカーの充電器であれば大丈夫だろうというのが一般的な認識でしょう。もちろん最終的には自己責任ですと言わざるおえませんが。
ユーザーの目線ではせっかくの統一規格であり、規格間の戦争も落ち着いてUSB PDがデファクトスタンダードとなったところなのに、独自規格を謳ったりするのはどうだろうと思います。電源関係は問題があると機器が故障したり、最悪なケースだと火災や爆発までありますので難しいところだとは思いますが、なんとか仕様だけでも公開(Motorola Japanのツイートは個人的には良心的な対応だと思う)してもらうとか、ユーザーの可用性が高まる方向になれば良いなと思います。