今まで愛車のエアコンガスをDIYで補充してきたのですが、今年は真空引きしてからエアコンガスを注入しましたので、真空引きの手順だけではなく理屈から図解して説明していこうと思います。真空引きは真空ポンプやらマニホールドゲージの仰々しい外見から、なにか難しそうな感じがして敬遠していましたが、理解してしまえば実に簡単なことでした。
真空引きとは?
真空引きとは?の前にカーエアコンの仕組みを簡単に説明しておきましょう。理科の授業で「気体を圧縮すると発熱する」ことを習ったと思います。エアコンというのはこの特性を利用しています。
まず、気体をコンプレッサーで圧縮すると発熱します。すると外気温よりも高い温度になりますので外気で冷やします。圧縮すると80度とかチンチンな温度になりますので、例え外気温が40度の灼熱だったとしても冷やす(熱エネルギーを奪う)ことができます。
次に、その気体をエバポレーターの入口で一気に圧力を下げてやれば、外気温で奪った熱エネルギーの分だけ、コンプレッサーで圧縮する前の温度よりも下がっているという訳です。その冷えた温度をエバポレーターで室内に放出します。これがエアコンの仕組みです。
熱を吸収したり放出したりする気体は空気では効率が悪いので、もっと適した「冷媒」と呼ばれるものを使用します。いわゆるエアコンガスです。エアコンの配管内をこのエアコンガスで満たすためには一度空気を抜いて真空にする必要があります。この作業が「真空引き」です。なんの事はありません。ポンプで配管内の空気を吸い出すだけです。
もう少し実際の配置に近い図に書き換えたのが下図です。色は温度ではなく圧力を示しています。
低圧側とか高圧側という単語が出てきますが、コンプレッサーで圧縮される前が低圧側、圧縮後が高圧側です。この高圧側と低圧側の接続ポートにそれぞれマニホールドゲージのホースを繋いで空気を抜きます。
ちなみに通常はエアコンガスが配管内に残っていますので、真空引きはしないで、そのまま補充するのですが、なんらかの要因で空気が混入している場合には真空引きをする必要があります。
本記事の対象となるのはエアコンガスがHFC-134aの車
エアコンのガスには色々と種類があります。1990年頃までのカーエアコンにはR12と呼ばれるフロンガスが使用されていました。R12用の道具や補充用ガス缶も売っていますのでDIYでできると思いますが、この記事では取り扱いません。
逆に、2013年頃よりHFC-1234yfという新しいガスに切り替わり始めています。このタイプは専用の機械が必要らしいのでDIYではできない(?)とかなんとか。まぁこの年代の車はまだエアコンのガス補給は必要ないでしょう。
今回対象となるのはその間のHFC-134aという、いわゆる代替フロンと呼ばれるガスが使用されているタイプの車です。R12は結構な旧車、HFC-134aは程よい旧車用といった感じです。この年代には魅力的な車が多いので、たぶんこの記事にたどり着いたほとんどの人の車はHFC-134aでしょう。
HFC-134aなのかどうかは、エンジンルームのエアコンガスの補充用接続ポートを見ればわかります。上の写真のように「H」と「L」のキャップがあればHFC-134aです。車名と上記のエアコンガスの種類をセットで順番にググっていけば大抵なんらかの情報が得られるのではと思います。
注意事項
ガスの大気開放は違法ですが、、、
エアコンのガスを大気に排出することは違法になります。しかし、実際にはどうしても多少は排出することになります。業者がバンバン排出するのが問題になる訳で、個人が多少排出してしまうのはしょうがないのではと思います。HFC-134aは代替フロンで環境負荷は比較的低いものです。
ちなみにエアーガンで使用されるガスも同じHFC-134aです。もちろんBB弾を発射するたびに大気に排出されます。このことが許されていることからも、個人的に多少排出してしまうのはあまり問題ではないと考えらます。もちろん排出するべきではないのは確かですので、なるべく少なくする努力はしましょう。厳密には違法であることは認識しておいてください。
途中で手順を間違えるとガス缶が破裂する可能性がある工程があります。
真空引きが終わった時点で高圧側のバルブは閉めて、それ以降開けることはない(ガスの注入は低圧側から行う)のですが、もしもガス缶を接続した状態で高圧側のバルブを開きっぱなしにしてエンジンを掛けていると、ガス缶に高圧側の圧力が逆流して破裂することがあるそうです。ガス缶もそんなに簡単に破裂するような強度にはなっていないだろうと思いますが、危険があると言うことは念頭においてください。
本記事では、正規の手順通りに高圧側の圧力も確認しながらガスの充填を行なっていますが、簡易型のチャージングホースの場合は低圧側のみでガスの補充を行いますし、真空引きと機密チェック後は高圧側のホースは車輌の接続ポートから外してしまっても良いと思います。
真空引きに必要な物と、その金額
今回使用した工具はアストロのマニホールドゲージと真空ポンプですが、これらは別にアストロのもである必要はありません。私は真夏のガス補充中に同じくアストロのチャージングホースが破損してガスが抜けてしまい、直ぐに作業したかったので近所のアストロで購入しましたが、アストロのマニホールドゲージと真空ポンプは少々高価です。今はもっと安価な製品がありますので、後ほど紹介します。操作性は同じだと思います。
この2つの道具があれば、後は補充用のガス缶だけ購入すれば必要なものは揃います。ちなみにマニホールドゲージがあれば、真空引きをしないでガスの補充のみを行うこともできますので、補充用のチャージングホースを別途購入する必要はありません。
エアコンガス(HFC-134a)
エアコンガスは大抵の場合は写真に写っているように1缶200gです。本記事では1缶200gを前提に話を進めます。HFC-134aであればどれでも同じものです。上記の写真のように私もその時に入手しやすい異なるメーカーのものを混ぜて使っています。1缶で数百円です。
ガス缶が何缶必要かはもちろん車によって異なりますが、これに関しては後述します。
マニホールドゲージ
マニホールドゲージは本体と各ホースやコネクタを接続する必要がありますが、わかりやすく色分けされていて間違いようがありません。これが組み立てることができないレベルの人だと、この作業はやめておいた方が良いです(笑)
低圧側と高圧側ではコネクタの大きさが異なるのがわかります。大きいほうが高圧側のコネクタですので赤いホースへ接続します。黄色ホースにはガス缶や真空ポンプを接続します。
以前、補充で使用したチャージングホースはコネクタがプラスチック製でしたが、このマニホールドゲージは金属製でしっかりとしていて安心感があります。ただし接続ポートに接続した状態でホースをひねったりした時にホースとの接続部が緩みやすいので、硬めに締め付けておいた方が良いです。私は途中で緩んで慌てました。
実は今回エアコンガスを補充しようとして抜いてしまったのは、アストロのチャージングホースのプラスチック製のコネクタが破損したことが原因でしたので、補充用としても、少し奮発してマニホールドゲージを購入しておくと良いかもしれません。マニホールドゲージもそれほど高価ではありません。
真空ポンプ
真空ポンプもホースの接続口が1つと、電源スイッチがあるだけなのですが、こちらは使用前にオイルを入れる必要がある(オイルレスポンプというのもあります)のが注意点です。
ホースの接続や電源スイッチは見ればわかるレベルですので、説明書を見ないで使い始めてしまいがちですが、オイルを入れないで使用すると故障しますので、これだけは気を付ける必要があります。私は危うくやってしまうところでした。
今回はすぐに必要だったため、近所のアストロにてマニホールドゲージと真空ポンプを調達しましたが、アストロのマニホールドゲージと真空ポンプは少々高価です。今はもっと安価な製品があります。下記のセット製品が良く売れています。
なお、真空ポンプを動作させるにはコンセントが必要です。賃貸住宅の場合はこの時点で少しハードルがありますね。私はインバーターを用意して使い古しの車用のバッテリーからコンセントを取って使用しています。ちなみに私の真空ポンプは180Wでしたので300W程度のインバーターを用意すれば余裕をもって使用できるはずです。少し大きめの電力のインバーターを買っておけばクリーナーやポリッシャーなども使用できて便利です。
マニホールドゲージがあれば以降のガス補充もできますし、もしも失敗しても真空引きからやり直せば良いと言うのは安心感があります。知らず知らずの内に空気が混入するようで、完全に空になっていなくても古いクルマは、真空引きすると冷え冷えになったりします。
メモリの読み方と圧力や充填量の適正値
アストロのマニホールドゲージは、もちろん圧力ゲージ(圧力メーター)にメモリは振ってあるのですが、どのくらいの圧力までエアコンガスを入れれば良いのかがマーキングされていません。説明書には低圧側圧力が0.15~0.25MPaが適正値とは書いてありますが、以前使っていた補充用のチャージングホース(下の画像)には、LOW、FULL、ALERT、DANGERと振られていましたので、プロットしてみたいと思います。
チャージングホースのメモリの単位はpsiになっています。マニホールドゲージに書かれているように1MPa=145psiですので、145で割ればMPaに換算できます。
~25psi = 0.17MPa LOW
~45psi = 0.31MPa FULL(適正値)
~65psi = 0.45Mpa ALERT
65psi~ = 0.45Mpa以上 DANGER
ですので、ゲージにプロットしてみると下の画像のようになります。
濃青がマニホールドゲージの説明書に記載されている適正範囲、水色がチャージングホースで示されている適正範囲です。マニホールドゲージの説明書では適正値は0.15~0.25MPaと書いてありますが、チャージングホースでは0.17~0.31MPaです。結構適当ですね。そもそも0.15~0.25というのも1.7倍もの幅がある数値ですのでアバウトなものです。
高圧側はチャージングホースにはありませんので、マニホールドゲージの説明書に記載されている値1.45~1.75MPaが適正値です。コンプレッサーで10倍くらいに圧縮されているということですね。まぁこのあたりを目安にガスを入れていきます。要は気にし過ぎる必要はないということです。
必要なガスの量はもちろん車種によって異なりますが、大体400~600g(2~3缶)だそうです。ググってみてわからなければ3缶用意しておけば良いと思いますが、足りなければ後日用意して補充することもできますし、逆に余ってもまた抜けてきた時の補充用にすれば良いと思います。
私の愛車(RX-7)は500g ± 50ですので、200gの缶を2缶だと少し足りなく3缶だと少し多いという悩ましい充填量ですが、結果的には2缶を注入しました。
1つ注意してほしいのは、これらの圧力値はエンジンを掛けてエアコンが稼働状態での値であることです。高圧側、低圧側というのはコンプレッサーから圧縮された空気が噴出して圧力が高くなっているところが高圧側で、コンプレッサーに空気が吸い込まれて圧力が下がっているところが低圧側ですので、コンプレッサーが作動していないと高圧側も低圧側もありませんからね。
真空引きの手順
それではいよいよ真空引きの手順です。
エンジンは停止状態で。
真空引きはエンジン停止状態で行います。1缶目のガス注入終了までは、エンジンを掛けることはありません。
マニホールドゲージの低圧側と高圧側のバルブを閉める。
時計回りで閉まります。
車両の接続ポートにマニホールドゲージを接続する。
車両の接続ポート「L」に低圧側のホース(青)を、「H」に高圧側のホース(赤)を接続します。LやHのプラスチック製のキャップはネジ込みですので回して外してください。LとHは大きさが違うので間違って逆には挿さらないようになっています。
このマニホールドゲージのカプラは外側をスライドさせてからポートに差し込んで、スライドを戻すとロックされます。抜く時もスライドさせるとロックが外れて引き抜くことができます。金属製のコネクタですので精度感があって安心できます。
完全にガスが抜けている場合はこの時点でマニホールゲージ、車両側の配管内は全て大気圧です。ガスが残っている場合は、この後の真空引きで抜いてしまうことになります。
ちなみにこの時点でエンジンを掛けて、エアコンをONにすれば、その時点での圧力をマニホールドゲージの圧力ゲージで見ることができます。どちらにしろ真空引きしようとする時点であまり意味のない値だと思いますが。もしもエンジンを掛けた場合は次の工程に行く前に停止してください。
黄色のチャージホースに真空ポンプを取り付ける。
真ん中の黄色いホースに真空ポンプを取り付けます。真空ポンプ側は黒いキャップが付いていますので、時計回りに回して外してください。
マニホールドゲージの低圧側と高圧側のバルブを開ける。
この時点で車両側の配管から真空ポンプまでが全て繋がっている状態ですが、もちろん全ての箇所は大気圧です。車輌側の配管内にガスが残っている場合はそのガスが真空ポンプ側まで入ってきますので、それなりに圧力が残っている場合はプシュとか音がするかもしれません。
今回は車両の配管内のガスは空ですので、低圧側、高圧側の圧力ゲージは共にほぼ0MPa(大気圧)を指しています。
真空ポンプをON
真空ポンプにオイルは入れましたね?
それでは真空ポンプの電源をONにして真空引きを開始します。低圧側と高圧側の両方からポンプが空気を吸い出しますので、マニホールドゲージや車輌の配管内の圧力は下がっていきます。
圧力ゲージを見ると低圧側、高圧側が共に負圧(0よりも低い値)になっていきます。
割とすぐにこのような値になって、あとはほんの少し下がるだけですが、説明書では5分が目安と書いてありますので、5分間くらい放置します。説明書に「真空ポンプの音が静かになったら」とありますが、カラカラ音は5分よりももっと早く静かになりますし、5分経っても完全に静かにはなりませんでした。
5分後に低圧側と高圧側の圧力ゲージの値をメモる。
5分くらい経過したら、低圧側と高圧側の圧力ゲージの値をメモしてください。この後の気密の確認(要は漏れていないかの確認)に必要となります。上の画像のように圧力ゲージをスマホカメラで撮影しておくのが良いでしょう。
マニホールドゲージの低圧側と高圧側のバルブを閉じる。
低圧側と高圧側の両方のバルブを閉じます。
この時点で配管内は負圧(だいたい真空)となっているはずです。
真空ポンプをOFF
真空ポンプの電源をOFFにします。前の工程で低圧側と高圧側の両方のバルブを閉じていますので、車両側の配管と青ホース、赤ホース内は繋がっていて、黄色ホース以降は切り離されている事になりますので、真空ポンプはもう切り離して良いと思いますが、説明書にはまだ真空ポンプは繋いだままにしておくように記載されていますので、一応そのままにしておきます。
真空引き後の気密チェック
ここからしばらく放置して漏れがないかの気密チェックを行います。圧力ゲージの値はメモしていますね?
そのまま10~20分放置する。
20分放置しました。30分でも40分でも1時間でも良いと思います。そのくらいで圧力が変わってしまうようではガスを入れてもあっという間に漏れてしまいますので。
予めメモしておいた圧力ゲージの値と比較する。
ここで真空引きの最後にメモしておいた圧力ゲージの値と比較します。私の場合はピッタリ一致しました。説明書には「0に戻らないことを確認」となっていますので車種によっては多少圧力が上がる(0に戻ろうとする)のかもしれません。少し戻っている場合は、更に時間を開けて、それ以上圧力が上がらないことを確認するのが良いと思います。
真空ポンプを取り外す
もう真空ポンプは必要ありませんので、黄色ホースから切り離します。
真空ポンプで塞いでいた黄色配管内に空気が入って大気圧になります。バルブは閉めていますので、赤青配管内は真空のままのはずです。
ガス缶1缶目の注入手順
エンジンは停止状態で。
真空引き後の1本目のガス缶はエンジンを掛けないで注入します。真空引きによって車輌の配管内は真空になっていて負圧になっているので自然と吸い込まれていくからです。
ガス缶にサービス缶バルブを接続する。
マニホールドゲージに付属していたサービス缶バルブをガス缶に接続しますが、ガス缶側の針が引っ込んでいることを確認してください。
ガス缶のネジ部分はグレーのパッキンがコーティングされていますので、そのままねじ込むことで気密されます。
サービス缶バルブを黄色ホースに接続する。
サービス缶バルブを黄色ホースに接続します。
まだ缶には穴があいていませんので、黄色配管内は大気圧です。
サービス缶バルブを閉めてガス缶に穴を開ける。
バルブを締め込んでガス缶に蓋をしているパッキンに穴を開けます。上の画像は既にねじ込んだ状態です。この時点ではサービス缶バルブの針が穴を塞いでいます。
サービス缶バルブを開いて針を上げて、ガス缶と黄色ホースが繋がった状態にします。
上の画像は既にバルブを開いた状態です。
パージバルブから黄色ホース内の空気を抜く。
ガス缶に穴をあけて、ガス缶内から黄色ホース内へ圧力が掛かっていますが、黄色ホース内の空気は逃げ場がないので、その場に留まっています。このまま低圧側バルブを開けてしまうと、せっかく真空引きしたのに車輌の配管内に空気が入ってしまいますので、黄色ホースの付け根にあるパージバルブを開けて空気を排出します。
パージバルブはキャップを回して外して、中のポッチを押してやる(爪で押せます)とプシュっとガス缶内の圧力で排出されます。一瞬で空気は排出されてガスが勢いよく出てきますので、方向に気をつけてください。私はモロに顔にガスを噴射してしまいました。
これで黄色ホース内の空気を抜いて、ガスで満たすことができました。
低圧側バルブを開ける。
ここまでの工程でガス缶から低圧側バルブまでがガスで満たされましたので、いよいよ低圧側のバルブを開いてガスを注入します。開くのは低圧側です。高圧側は開かないようにしてください(エンジンを掛けない1缶目では高圧側も開けて両方から注入すれば良い気がしますが、エンジンを掛ける2缶目以降で事故にならないように一律高圧側は開かないことになっているのだと思います)
この時点でガスの注入が始まります。
図ではコンプレッサーからエバポレーター間の高圧側にはガスが回っていないようになっていますが、実際には回っていきます。段々と配管内がガスで満たされていく過程だと思ってください。
低圧側バルブを開けた時の圧力ゲージの値はガス缶からの圧力により結構上がります。低圧側は既定値を大幅に上回るのでビックリしますが、あくまでもガス缶の圧力で注入されているからです。
ガス缶を振って注入されるのを待つ
ガスはガス缶内の圧力と車両の配管内が真空(圧力が低い)であることにより吸い込まれていきます。真空に吸われるイメージから、もっとシューと音がしたり、圧力が急激に下ることで缶が冷たくなったりするのかと思っていましたがそれほどでもなく、あまり吸われている感はありません。ガスは缶の中で液化していますので、振ることで気化させて吸わせます。今ひとつ入っていく感じが低いのですが気長に缶を振って待ちましょう。
1缶の注入終了の判断
エンジン・エアコン停止状態で注入する1本目は、かなり時間がかかります。私は15分くらい缶を振っていました。最初のうちは缶を振っていると中で液化したガスがあるのがわかりますが、段々と少なくなっていくのを感じます。
仕組み上、ガスを完全に注入しきる事はできないのですが、缶を振っていると「大体カラになったなぁ」というのがわかります。
振っているとガスが気化することで体積が増えて圧力ゲージの値は上がっていきます。私の場合は上の画像くらいまで上がりました。先にも書きましたがエンジン・エアコン停止状態の値ですので有意な値ではありません。値は車種や外気温でも変わると思いますので目安で。
エアコンのコンプレッサーは動いていませんので、低圧側と高圧側の圧力が同じ0.68MPaくらいであることが見て取れます。
低圧側バルブを閉める。
低圧側バルブを閉めて1缶目の注入は終了です。続いて次の章で2缶目を注入しますのでガス缶のみ取り外してください。ガス缶は完全に空にはなりませんので、ガス缶を取り外した時に残りのガスがプシューと出ますが慌てないでください。
もしも1缶目注入状態で圧力ゲージの値を確認したい場合は、低圧側と高圧側のバルブを閉めたままでエンジンを掛ければ確認することができますが、1缶しか入らない車種はないと思いますので、本記事では、このまま2缶目の注入作業に入ります。ちなみ2缶目を注入する前提であれば、ここで確認しなくても2缶目の注入開始直前にはこの1缶目注入後の圧力を見ることができます。
2缶目以降のガスの補充手順
概ね1缶目と同じ手順ですが、2缶目以降はエンジンを掛けてエアコンを動作させた状態で注入します(今はまだエンジンを掛けないでください)
なぜ、エンジンを掛けてエアコンを動作させた状態で注入するかと言えば、エアコンを動作させることでコンプレッサーは低圧側のガスを吸い込み、圧縮して高圧側に排出します。このコンプレッサーの「低圧側のガスを吸い込む」ことで低圧側の圧力が下がるので注入しやすくなると言うわけです。
最初はエンジンを停止状態で。
ガス補充の注入時はエンジンを掛けますが、最初は停止した状態にしておいてください。
低圧側バルブと高圧側バルブが閉まっていることを確認する。
1缶目注入終了時点で既に両方閉まっているはずです。
ガス缶にサービス缶バルブを接続する。
1缶目と同様の手順でガス缶をサービス缶バルブに接続してください。
マニホールドゲージに付属していたサービス缶バルブをガス缶に接続しますが、ガス缶側の針が引っ込んでいることを確認してください。
ガス缶のネジ部分はグレーのパッキンがコーティングされていますので、そのままねじ込むことで気密されます。
サービス缶バルブを閉めて開いてガス缶に穴を開ける。
1缶目と同様の手順でサービス缶バルブを閉めて穴をあけ、再びバルブを開くことでガス缶と黄色ホースが繋がった状態にします。
パージバルブから黄色ホース内の空気を抜く。
これも1缶目と同様です。パージバルブの中のポッチを一瞬だけ押してやることでプシュっと黄色ホース内の空気を抜きます。ガス缶内の圧力で押し出します。勢い良くガスが吹き出しますので顔にかからないようにパージバルブの方向に気をつけてください。
エンジンを掛けてエアコンをONにする。
真空引き後の1缶目と異なるのはここです。エンジンを掛けてエアコンを最大出力で作動させてください。常にエアコンが動作するように窓やドアも開けっぱなしてください。
エアコンのコンプレッサーを作動させることでコンプレッサー手前の低圧側の圧力が下がり、コンプレッサー後の高圧側の圧力が上がります。
バルブは閉めたままですので、まだガス缶のガスは注入されていません。
この時点で低圧側、高圧側の圧力を圧力ゲージで確認することができます。下の画像は2缶目注入直前、つまり1缶のみ注入した時点での圧力です。エンジン始動前よりも低圧側の圧力が下がり、高圧側の圧力が上がっていることがわかります。低圧側、高圧側共にまだ規定値には達していませんので、2缶目を注入します。
この段階で低圧側、高圧側の圧力が既定値の範囲に入っていれば補充の必要はありません。エンジンを停止して作業終了です。
低圧側バルブを開ける。
低圧側のバルブを開いてガスを注入します。開くのは低圧側です。高圧側は開かないようにしてください。ここで高圧側を開くと、車輌のコンプレッサーで圧縮された高圧がガス缶に逆流して最悪ガス缶が破裂する可能性があります。
エアコン動作中に低圧側のポートから配管を抜いてみる(今はバルブが空いていますのでやらないでください)とプシューと派手にガスを吹き出しますので、低圧側も大気圧よりは高圧でガス缶の圧力で押し込むのかなと思いますが、なぜか真空に注入した1缶目よりも勢いよく吸い込まれていきます。なにか流体力学的な法則があるのかもしれませんが、よくわかりません。。。
低圧側バルブを開けた時の圧力ゲージの値はガス缶からの圧力により上がりますが、徐々に下がっていきます。
ガス缶を振って注入されるのを待つ
2缶目は1缶目よりも勢いよく注入されていきますので、缶の内部の圧力が急激に下がることで、缶がキンキンに冷えます。手で温めたりしながら軽く振ります。
注入終了の判断
1缶目よりは格段に早く5~10分ほどで缶が軽くなり、冷えないようになって、振っていても中の液体感がなくなってきます。1缶目と同じく仕組み上、ガスを完全に全て注入しきる事はできないのですが、缶を振っていると「大体カラになったかな」というのがわかります。
低圧側バルブを閉める。
低圧側バルブを閉めて注入終了です。
バルブが両方閉まっているのを確認して2缶目を取り外してください。
圧力ゲージを確認する。
低圧側と高圧側の圧力ゲージを確認します。適正値である低圧側が0.15~0.25(チャージングホースの表示では0.17~0.31)MPa、高圧側が1.45~1.75MPaに入っていれば終了です。足りなければ次のガス缶を注入します。
私の場合は2缶目終了時に、低圧側が0.32MPaと上限ギリギリオーバー、高圧側が1.42MPaと下限ギリギリアンダーと悩ましい状態でした。コンプレッサーの性能が一般的なものより低いって事なのかもしれませんが、17年落ちの車ですので性能も低下しているでしょう。
既定値はあくまでも「一般的な値」ですので、車種によっても多少は違うと思います。
個人的には「黄信号(ALERT)の真ん中くらいまでおk」な性格ですし、2缶で合計400gの注入量ですので、前述の表の規定量である500±50に50g届いていません。高圧側がオーバーするのはマズイと思いますが、たぶん低圧側はオーバーしても問題ないと思います。そう考えると、もう1缶入れたい衝動にかられましたが、エアコンの冷え具合は十分でしたので2缶で終了しました。きっと来年、少し抜けた頃に1缶補充すれば丁度よいくらいでしょう(適当)
エンジンを止める。
エンジンを停止して終了です。
続いて次のガス缶を補充する場合は、この「2缶目以降のガスの補充手順」を最初から繰り返してください。
終了する場合は車輌側の接続ポートより低圧側、高圧側カプラーを抜いてください。カプラーは外側をスライドさせることで抜けます。
車両側の接続ポートのキャップを忘れないように取り付けておきます。
まとめ
私の愛車であるRX-7はよくネット上で「エアコンの効きが悪い車」と言われているのですが、そんな事はありません。皆さんガスが足りないか空気が混入しています。古い車は一度真空抜きするのが良いかもしれません。
真空引きは真空ポンプが必要だったり、マニホールドゲージのルックスが仰々しいので、難しそうなイメージを抱いていましたが、理解してしまえば単純な作業です。間違いのないように念押ししながら書いていますので長くなりましたが、まとめると
<<真空抜き>>
高圧側、低圧側接続ポートに赤色ホースと青色ホースのコネクタを接続する。
黄色ホースに真空ポンプを接続する。
高圧側低圧側のバルブを開ける。
ポンプを動作させて5分放置
高圧側低圧側のバルブを閉める。
数十分そのまま様子をみて気密が保たれているか確認する。
<<1缶目注入>>
黄色ホースに缶を接続する。
パージバルブから黄色ホース内の空気を抜く。
低圧側のバルブを開ける。
缶を振って注入する。
低圧側のバルブを閉める。
<<2缶目以降注入>>
黄色ホースに缶を接続する。
パージバルブから黄色ホース内の空気を抜く。
エンジンを掛けてエアコンを稼働させる。
低圧側のバルブを開ける。
缶を振って注入する。
低圧側のバルブを閉める。
エンジンを切る。
3缶目入れるなら<<2缶目以降注入>>をもう一度
と、これだけです。理屈を理解してしまえばなんのことはありません。
あ、お決まりですが、本記事を参考にして、もしあなたやあなたの車に何かあっても当方は一切感知しません。自己責任でお願いします(こんな断りをいちいち書くのは嫌いなのですが、こんな時代ですので。。。)