車のエアコンしっかり効いていますか?少し古めの車に乗ってる人は、一度はエアコンの効きが悪いなと思ってディーラーなどで補充してもらったりしてますよね?プロに依頼すると結構な金額を請求されますが、実はエアコンのガスは数百円で購入できるし、自分で補充するのもそんなに難しくもありません。今回は、そんなカーエアコンのガス補充の仕方を図解で、理屈から超わかりやすく紹介したいと思います。
ネットでエアコンガスの補充方法を調べてみると、こうしてこうするといった作業の手順はみつかるのですが、理屈から説明されているサイトは見当たりませんでした。作業するにしても、「なぜそうなるか?」が分かっていないと不安ですよね。理屈がわかっていると手順に間違いがあっても気づくものです。そこで今回は理屈も含めて図解で出来るだけわかりやすく説明したいと思います。私も先日まで素人でしたので、素人目線で説明できると思います。
カーエアコンの仕組み
「カーエアコンの仕組み」と言いますか、家庭用のエアコンも原理は同じです。
気体は圧縮すると温度が上がります。そこで、気体をコンプレッサーで圧縮して外気よりも高い温度に上げておき、外気で熱エネルギーを奪って(=冷却)から圧力を戻せば、外気に奪われた熱エネルギーの分だけ、最初より温度が下がっているという寸法です。この気体として使用されているのが、冷媒と言われるエアコンガス、いわゆる代替フロンです。
一般的にはコンデンサーは車のラジエターの前に設置されています。コンプレッサーはエンジンの回転により回すためエンジンルーム内に、エバポレーターは車内にあります。図中の温度は説明するための目安ですので、実際とは異なります。
このエアコンガスは密閉されているのですが、各機器やパイプはゴム製のパッキンで繋がれていますので、そのパッキンが劣化して硬化することによって、経年変化でどうしても少しづつ漏れてきます。エンジンルーム内は振動や熱など、家庭用エアコンよりもかなり過酷な環境ですので尚更です。ちなみに、このパイプの中にはオイルも一緒に入っています。このオイルはコンプレッサーを滑らかに動かすためでもありますが、パッキンの隙間にオイルが入り込むことで密閉度を上げる役割もあります。オイルは放置しているとゆっくりと流れ落ちてしまいますので、冷房を使用しない時期でもたまに動かしてやることで、オイルをまわして密閉度を持続することができます。
このような事情のために、古い車はどうしてもエアコンガスが漏れがちです。私の車は15年ものですので、2~3シーズンくらいで「あれ?エアコンの効きが悪い?」という感じになります。
今回の対象となる人はこんな車
エアコンのガスがHFC-134aの車
1990年頃までのカーエアコンにはR12と呼ばれるフロンが使用されていました。この車は、この記事とは扱いが異なります。逆に2013年頃よりHFC-1234yfというガスに切り替わり始めているそうですので、新しい車の人も対象外です。
1990年頃から2013年頃の車には、HFC-134aというガスが使用されています。見分け方はエンジンルーム内に下の写真のような「H」「L」の表示のキャップがある車です。探してみてください。私の車はエンジンルーム内の後ろ側、助手席の方にありましたが、ラジエター周辺などにある場合が多いようです。
「H」は高圧側、「L」は低圧側と呼ばれています。それぞれコンプレッサーが圧縮した後と、圧縮する前に設けられた接続ポートです。今回はこの低圧側である「L」のみを使用します。
「効かない」ではなく「効きにくい」車
エアコンガスが完全に抜けている可能性がありますが、その場合はガスを充填する前にパイプの中を真空にする必要がありますので、真空ポンプを使って「真空抜き」と呼ばれる作業が必要になります。
「あまり暑くない時は効くのだけどなぁ」みたいな人が対象です。
後日「真空引き」もDIYでやってみました。補充よりも手順は多いのですが、意外と簡単です。古い車は空気が混入していますので、一度真空引きをするとグッとエアコンの効きが良くなったりします。
面倒くさがりではない人
面倒くさがりの人は、適当な作業をして思わぬ失敗に至る可能性が高いのでお勧めしません。プロに依頼しましょう。
危険なの?
ネットでカーエアコンのガス補充を検索してみるとわかりますが、質問サイトなどでは、とにかく「やめておけ」「危険!爆発する!」「壊れるぞ!」の大合唱です。初心者に忠告するのは良いと思いますがちょっと脅しすぎな気がします。個人的にはオイル交換などジャッキアップして車の下に潜るような作業よりは格段にリスクの小さい作業だと思います。
爆発する!!
「爆発する」「大怪我する」と言う人がいます。これは真空引き用のマニホールドゲージを高圧側に繋いでいる時に間違えると高圧が掛かってガス缶が破裂する可能性があるようです。ガス缶は鉄製のかなり丈夫なものですので、ちょっとやそっとで破裂するとは思えませんが、低圧側のみを使用する今回のような補充ではその危険はありません。またHFC-134aが燃えるのは170度以上ですので、普通に扱っている分には不燃性です。缶には圧力が掛かっていますので熱すると破裂する可能性はありますが、それは殺虫剤でも同じことです。念のため暑い日に作業する時は缶を車の影に置いておくとか、ちょっと配慮しておけば大丈夫ではないでしょうか。火気厳禁なのは言うまでもありません。
壊れる!!
壊れないと思います。通常エアコンには圧力のリミッターが設けられていて、異常に高い圧力が掛かった時には動作しないようになっています。「ガスを入れ過ぎるとエアコンが効かなくなるけど、少し抜くと効くようになる」のは、このリミッターが作動する為です。もちろんリミッターが作動しない程度に入れすぎると機器に負荷は掛かりますが、リミッターが作動しないと言うことは問題がないと言うことと考えて良いでしょう。
そうは言っても「安全」とは断言できません
ここまで、あくまでも常識の範囲で「大丈夫」と書きましたが、缶が高圧であることは確かですし、ガスも火を付ければ燃えます。エアコンはガスを圧縮膨張させる仕組みですので、その段階でなんらかの危険な要因があるかもしれません。従って「安全」とは言い切れませんので、そこは肝に命じてください。
カーエアコンのガス補充に必要な物と、その金額
さて前置きが長くなりましたが、いよいよ本題です。必要なものを説明していきます。
補充用エアコンガス(HFC-134a)
まずは補充するエアコンガスです。HFC-134aであればどれでも良いと思います。大抵は1缶200gですが、本記事で説明する場合の1缶はこの200gを前提とします。複数のメーカーのものがありますが、特に違いはないでしょう。私などはその時に入手性が良いものを使用していますので、異なるメーカーのものが混ざっていますが問題ありません。
値段は1缶数百円程度です。カーショップやディーラーでは数千円になりますので、「もう1缶入りそうですけど?」と言われて「いや、取り敢えず1缶で様子みます」と断る感じでした。車によって違いますが、空っぽで3缶程度だそうですので、大抵の場合は2缶用意しておけば良いと思います。
チャージングホース
圧力計がついているものを買ってください。私は名前が通っているのでアストロの製品を入手しましたが、この製品は車両に繋げるコネクタがプラスチック製で非常に脆いです。繋げる時にはかなり力が掛かりますので高い確率で破損します。実際に私は破損して後日のガス補充でガスが漏れてしまい、結局真空引きするハメになりました。コネクタ部分が金属製のものをおすすめします。
また、車両側のポート位置にもよりますが、長さが短すぎて非常にやりにくかったです。少し長めのものがよいでしょう。
缶側はパッキンがコーティングされたネジになっていて、そのままねじ込めば密閉されるようになっています。チャージングホースのガス缶の接続口の中には針があります。上の手回しバルブを回すと針が下に降りて缶側のパッキンに穴を開けてガスが出てきます。後ほど手順で説明します。
車両側はクイックカプラになっています。
下の写真のように外側をスライドさせて、車両側に押し当ててからスライドを戻せば密閉されます。
エアコンオイル
写真を撮り忘れましたが、こんなやつです。
「カーエアコンの仕組み」で説明しましたが、配管内にはオイルも一緒に入っています。オイルも経年劣化しますので、10年くらい経過した車は1本入れておくと良いです。私はガス補充時に揃っていませんでしたが、後日に追加で注入しました。注入中にあからさまにコンプレッサーの作動音がなめらかになりました。毎回注入するようなものではありません。
整備用グローブ
なにかの突起などで怪我をしないようにグローブ等をするのが良いでしょう。私は車の整備時にはこのウレタンのグローブをしています。滑り止めにもなりますし、手も汚れにくく、怪我もしにくいです。ダイソーに売っています。車載工具と一緒に車にも常備しておくと、何かの時に役に立つと思います。
合計で4,000~5,000円程度。チャージングホースは次回以降にも使えますので、次からは数百円のガスを補充していけばOKです。
カーエアコンのガス補充の手順
チャージングホースへガス缶を取り付ける
まずはチャージングホースにガス缶を取り付けます。ガス管のネジ部分にはパッキンとなる樹脂がコーティングされていますので、そのままチャージングホースにねじ込んでください。その時、ガス缶のパッキンに穴を開けてしまわないように、チャージングホース側の針は一番上に上げておきます。
この時の概略図はこんな感じです。水色がチャージングホース、赤がガス缶、オレンジが車両側のパイプです。もちろん車両側のパイプは上下はエバポレーターやコンプレッサーに繋がっています。まだガス缶に穴は空いていません。
チャージングホースを車両側パイプに接続する
次にチャージングホースを車両側パイプの接続ポートに接続します。接続ポートは低圧側と言われる「L」の表示のあるほうです。ポートのサイズが違いますので、間違ってもH側には繋がらないようになっています。
キャップを外した時点ではガスが漏れてきたりはしませんが、チャージングホースを挿す時にはプシューとガスが漏れてしまいますので素早く行ってください。道具の紹介の所で説明したようにクイックカプラの外側をスライドさせてから、車両の接続ポートに押し当ててスライドを戻します。
私の車の問題かもしれませんが、最初なかなかハマらなくて規格が違うのかと思いましたが、このHLのキャップがあればそんな事はありません。私の場合も気合で押しこめばハマりました。最初の1回が固いのか、単に要領を掴んだのかわかりませんが、2回目以降は簡単にハメれるようになりました。
車両側パイプとチャージングホースは繋がりましたが、チャージングホース内には空気が残っています。この時点では車両側の方が圧力が高いですが、チャージングホース内の空気は逃げ場がないのでその場に留まります。
チャージングホース内の空気を抜く
このままガス缶に穴を開けると、ガス缶の圧力に押されて空気が車両側に入ってしまうので、ガス缶に穴を開ける前に空気を抜きます。ガス缶を少しだけ緩めてやると、車両側の圧力で空気が押し出されて「プシュッ」と抜けます。一瞬で大丈夫です。
これで、チャージングホース内がエアコンガスで満たされて準備OKです。
エンジンを掛けて、エアコンを最大出力でONにする
ここまで準備ができたら低圧側の圧力を下げるため(低圧側はコンプレッサーに吸い込まれるので圧力が下がり、ガスを注入しやすくなります)と、稼働時の圧力を見るためにエンジンを掛けて、エアコンを最大出力でONにします。常にコンプレッサーが作動するように、窓(できればドアも)やハッチバックなども全開にしておきましょう。
エンジンを掛けた時の圧力計の値が注入の目安になります。私は「空っぽなんじゃね?」な値を指していますが、あまり暑くない時にはちゃんと冷えるので空ということはありません。
この時点で圧力計が水色に入っていればエアコンガスは入っているということですので、チャージングホースを車両側の接続ポートから外して、作業終了してください。ガス缶も開いていませんので、また次回まで、あまり暑くならないところで保管してください。この状態でエアコンが効かない場合は、他のトラブルを抱えている可能性がありますのでプロに相談してください。
針でガス缶のパッキンに穴を開けて注入開始
いよいよガスの注入です。手回しのバルブを回して針を下げてガス缶に穴を開けます。
ガス缶の蓋に穴が空きますが、この時点では針で穴が塞がっていますので、逆に回して針を戻します。
すると、ガス缶内の圧力の方が車両側のパイプの圧力よりも高いので、ガスが入っていきます。
この時、圧力が下がることで、ガス缶がキンキンに冷えてきますので、手で温めたり、気化させるために降ったりすると、ガスが入りやすくなります。
ガスの補充終了の判断は?
ガス缶が空になった(正確には完全に空にはなりません)かの判断は、圧力計で行います。ガス缶からガスが流れ込み始めた時には、上の図でチャージングホース内が赤色になったように、ガス缶内の圧力が高いため、圧力計が上がります。その後徐々に圧力が下がっていき、それ以上下がらなくなったところが、ガス缶内の圧力と車両側のパイプ内の圧力が同じになったということですので、そこで終了です。ガス缶の重量も、まだ補充していない方のガス缶と持ち比べると軽くなっている事が分かります。感覚ですが「あ、空っぽになったな」というのがなんとなくわかります。
2本目のガス缶を入れるか?の判断
1本目のガス缶を補充した時点で、圧力計が水色の範囲に入っていれば、とりあえず2本目のガス缶は補充しない方が無難です。その状態でしばらく様子を見ましょう。私の車両の場合は「FULL」に入った状態でガス缶をもう1本とオイルを注入すると、黄色の「ALERT」にちょっと入ってしまいました。取り敢えずその状態で乗っています。抜けば良いのですが、エアコンガスの大気開放は違法行為になりますので、その場合はプロに抜いてもらった方が良いでしょう(ガスの回収機があります)
2本目のガス缶への交換は?
2本目のガス缶もしくはオイル缶を注入する場合は、チャージングホースを車両側の接続ポートに繋いだままガス缶をチャージングホースから外してはいけません。接続ポートは開放されているので、ガスがダダ漏れになってしまいます。必ずガス缶をチャージングホースに繋いだまま、チャージングホースのクイックカプラを車両側の接続ポートから外してください。その後に、ガス缶をチャージングホースから外して、最初からやり直しです。
お決まりですが自己責任で。
お決まりではありますが、本記事の内容はあくまで「私がこうして問題がなかった」という内容の解説であって、その行為を推奨している訳ではありません。あなたや、あなたの車に何が起ころうと当方は一切関知致しませんので、あくまでも自己責任でお願いします。
細かく書きましたので大変そうに見えますが、作業手順的には本当に簡単です。
缶をホースに付ける
ホースをLの接続ポートに付ける
缶を一瞬緩めてプシュッとホース内の空気を抜く
エンジンを掛けてエアコンをON
針を下げて、また上げる(ガス缶の蓋に穴をあける) → 注入開始
入れ終わったらホースを接続ポートから抜く
たったこれだけです。ジャッキアップして車の下に潜ることが必要なオイル交換よりも全然簡単です。ちなみに私の場合は、これで冷え冷えになりました。今後は1缶数百円で、1~2年に1缶、圧力計をチェックしながら補充していこうと思います。
ガスはどれでも同じですので本数を確認して1本あたりが安価なものをチョイスすればOKです。
チャージングホースはコネクタが金属製で長めのものがおすすめです。